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赤木智弘  <格差問題解決へ一歩>  ベアより非正規雇用の処遇 [Ethics]

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赤木智弘が、1月9日、毎日新聞<2009年 日本への提言>で、私が主張してきたことを述べてくれている。

すなわち:

1 連合の09年春闘ベア要求は間違っている(ベアではなく、解雇された派遣労働者の雇用を護れ)

2 正社員(&既成組合)と派遣労働者の利害は対立している。これをまず知ることが重要。 すなわち労働側の内部に、格差と、意見対立が厳然として存在するのだ。


赤木は、次のように言っている:

連合の高木剛会長が昨年4月『主犯は経営者、従犯は労働組合』だったと、非正規労働問題に対し、内省的な態度を示した。それが昨年末、「派遣切り」が問題になり始めた重要な時期に、彼らはベアの要求を大きく掲げたのだ。

わずかばかりの物価の上昇と、職を失えば社会からはじき出される非正規労働者の問題とでは比較にならない。自分たちが非正規問題の「従犯」だと認めるのならば、現状でまっ先に課題とすべきは、ベアなどではなく、まず非正規の処遇だろう。

かつてバブルが崩壊したときに雇用確保のために就職氷河期世代を見殺しにしたのと同じことを、彼らが再びしているようにおもえてならない。

(略)

。。(世界を襲う不況の波。。そのような) 状況でのこの一年は、まさにそれぞれの立場の人々のエゴが、むき出しとなり、違った立場の人間を容易に傷つけ合う一年になると、私は予想している。」


ここからが、普通の論者と、赤木の違うところだ。


だが私はまったく悲観していない。それどころか、不況になってくれてよかったと思っている。それにより社会の大勢には、弱者に対する同情心などなかったということが、ハッキリ示されたのではないか。

病気の検査と同じことで、原因がハッキリしないまま、やみくもに治療方法をさぐるよりも、原因がわかっていた方が治療はやりやすい。

今回の連合によるベア要求は、格差問題がけっして「労働者vs経営者」という二元論に納まる問題ではないということを明らかにした。今後、現状の立ち位置をうやむやにしたまま「正規も非正規も関係なく、一緒に闘うべきだ」と共闘を訴えるだけの言論は説得力を失うだろう。

(略)

正規労働者と非正規労働者が対立している」という当たり前の前提が共有される流れが生まれれば、問題解決に向けた大きな進歩となる。

(略)

彼らを救うためには、不況をてこにした経済成長を絶対条件とする「戦後日本」の社会システムの膿を、この機会に徹底的に絞り出すしかない


文句なしの正論であるとおもえる。


<問題解決に向けた大きな進歩である>といっても、これは体勢のゼロリセットだから見かけ上は退歩であるし、<労働側の仲違いは、経営側に利するだけ>というワンパターンの組合側の批判にサラされる可能性は十分ある。しかし、同じ批判は労組の歴史に、ワンパターンのごとくくり返されその都度、組織に対する批判派は煮え湯を飲まされてきたのであり、全体の利益ではなく、経営と合体した一部社員のみが優遇されてきたのである。

派遣労働者やワーキングプア問題を見過ごしてきた責任を問われているのは、組合だけ、ではない。既成政党も、既成組合の票ほしさに、一部労働者の利益のみしか視野に入れず、労働者のうち弱者部分を見て見ぬふりをしてきた。そのスキを経団連に突かれ、結果は<派遣法>という天下の悪法を立法化するという大失態を演じた。しかも、与党はもとより、野党までおのれの犯した犯罪的立法化(派遣法)をまったく反省していない。 これから、既成政党と、政府・官僚がどの程度反省するのか。 余り期待できないが、これまで誤魔化され続けてきた社会的弱者の忍耐も臨界点にまもなく達するだろう(こころみに、数万の解雇がこの春までに追加されている中で、連合の要求する1%強のベアを経営側が認めた場合にどういう事態が生ずるか想像すればよい)。


赤木智弘のこの問題提起に、既成組合や、政党はどういう対応を示すのだろうか。あるいは、これまでどおり、黙視するのか?残された問題は、組織化がまだ不十分、あるいは、緒に就いたばかりの全国の非正規労働者の側は、今後、組織化をどのように勧めるか、である。たとえば、もやい、の湯浅誠などがリーダーシップをとれるのか。 昨年末のテレビ朝日<朝まで生テレビ(朝生)>に湯浅誠が登場していたが、彼は、連合のこのベアを批判していなかった。それどころか、正社員の賃上げは、非正規労働者の待遇改善につながる、と述べた。 勘違いしていると思わざるを得ない。




追記:
先日、TBSのバトルトークという番組で視聴者アンケートをとっていた。ワークシェアリングに賛成か、反対か?

賛成は、全体の49%、反対は30%。
賛成派は、現在の給与が30%下がってもワークシェアリングやむなし、と回答している。

連合は、組合員(正社員)全体のアンケートをとり、結果を公表したらどうか。


追記2:
昨日、NHK『首都圏特報』は、派遣切りがいかに行われたか、を報じていた(首都圏だけの関心事ではあるまいに)。
某自動車会社の期間工が、派遣社員に転籍することを会社から勧められた。応じれば10万円の一時金として支給する、と。そして一時金に目が眩んで(本人の語るところによる)、応じたのである。会社の用意した寮にはいることが条件であるが、その寮たるや、ガスも調理場もないシロモノ、寝るだけである。外食せざるを得ない。家族に仕送りするため1日500円の外食で済ませた。その後で、首切りにあうのである。 一種のダマし。これは現代の奴隷制度である。

夕方、TBSラジヲで社会学者・宮台真司、が彼らしい、冷静な解説を行っていた。派遣は絶対になくならない、もし、派遣を法律で禁止すれば、輸出に頼る大企業はすべて海外に移転します、と。国民を最低賃金、奴隷状態で働かせて、これが世界最先端をゆくエコカーでござい!!と、売りまくる。社会学者とはなんと、冷静な観察者であることか。<政治的価値判断を含む、あらゆる価値判断を学問的研究から分離しようとする「価値自由(Wertfreiheit)」の精神>に、完敗、もとい乾杯!
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人事総務部-ブログ&リンク集-

派遣法改正 雇用問題 賃金格差 
今の政治やマスコミは、雇用問題をどう考え、どう解決に持っていくつもりなのでしょうか。与野党とも、一体何をしたいのかが全く理解できません。雇用問題は、今わが国において一番大きな社会問題である筈です。金融不況が発生するまでは“偽装請負”“賃金格差”“日雇い派遣”と大騒ぎし、いざ金融不況の直撃を受けたら、“製造派遣”“派遣切り”と大騒ぎ。まるで芸能ニュースと何ら変わりありません。
“日雇い派遣禁止”だとか“製造派遣禁止”と、禁止論を主張するだけなら誰でもできます。また、方向付けをした場合のセーフティネットは論議にもなっていません。単に労働者派遣法を改正するだけでは、わが国の雇用問題は全く解決しないのです。派遣法改正、賃金格差に伴うセーフティネット、それらが一体となって議論・改正されない限り全く無意味です。。派遣法改正、雇用問題、賃金格差の三位一体改革は、厚生労働省に依存するのでなく、今年行われる総選挙の政局を占う“大命題”として国民に信を問わなければ、「雇用問題」の根本的解決にはならないと考えます。
全文は下記ブログにてご確認下さい
http://www.xn--3kq4dp1l5y0dq7t.jp/

by 人事総務部-ブログ&リンク集- (2009-03-28 11:27) 

古井戸

>単に労働者派遣法を改正するだけでは、わが国の雇用問題は全く解決しないのです。

全く、ということはありえません。全く、であることの証拠を見せてください。

たとえば、派遣会社を禁止する、という措置ならすぐにでもできる。経過措置として一年を見込めば十分。企業の直雇用とする。

偽造請負など違法を犯した会社に対する厳罰も直ちにやろうとおもえばできる。営業停止半年以上。議員がやろうとしないのは企業の献金をもらっているからです。

最低賃金改正、もちろん、必要ですがこれも単独で可能。

一挙にやらなければ全て無効、など、ありえないナンセンス話です。

同一賃金同一労働とておなじ。

経費がかかるのは明か。<死なぬよう>生活保護をするのは国の務め。カネが足りなければ税金を上げるか、国債を発行するしかない。飢えるのなら全員で飢えればよいんですよ。
by 古井戸 (2009-03-28 18:28) 

通りすがり

派遣を正社員として雇うんですか?
それで業績が良い時はいいとして、業績が悪化したらどうするの?
正社員なんて簡単にクビにもできないし。
無理な事を言っても仕方が無いのでは?
by 通りすがり (2009-10-29 20:04) 

須坂 三十四

『ガリーバー旅行記』の作者ジョナサン・スイフトが1729年に「貧家の子女がその両親並びに祖国の重荷となることを防止し、且つ社会に対して有用ならしめんとする方法についての私案」という短い論文を書いています。

その内容は、
イギリスの支配や地主制度などにより窮乏の極みに達していたアイルランドの貧民を救う方法はひとつしかない。
毎年生まれる貧民の12万の赤ん坊のうち10万人は満1歳になったら、それを上手に料理して食ってしまうことである。料理をするのは高級料亭、食べるのは金持ちの地主である。
赤ん坊は1歳ぐらいまではほぼ母乳だけで育つので、両親は食費の負担を免れるだけでなく、赤ん坊を売ることで現金収入が得られる。
そのほかにスイフトは、この案の素晴らしさをいくつも具体的に説明した上で、赤ん坊の両親も、自分たちの経験した不幸を考えれば、1歳で食べ物として売ってしまった方がよいと考えるに違いないと結んでいます。
いくらお上品な言葉で冷静に批判をしても、少しも変わらない現実に業を煮やしたスイフトが放った痛烈な皮肉は、「赤木論文」とどこか似ています。
スイフトは、アイルランドの貧困をそのまま放置すれば、貧民の赤ん坊は食べてしまうしか救われない、したがって、赤ん坊を食べないですむためには、現に存在する貧困をなくすしかない、といいたかったわけです。
貧困を放置するという前提で考えるならば、戦争しか希望はないという主張は、数学で言うところの「背理法」と受け止めました。
長々とお付き合いくださり、ありがとうございました。




by 須坂 三十四 (2010-09-03 17:26) 

氷河期

>たとえば、派遣会社を禁止する、という措置ならすぐにでもできる。
>経過措置として一年を見込めば十分。企業の直雇用とする。

出来ません失業します。
正社員として雇うならば新規採用を今以上に減らし
一人当たりの労働時間は劇的に増えます。

>偽造請負など違法を犯した会社に対する厳罰も直ちにやろうとおもえば>できる。

貴方の言う厳罰が如何ほどのものか知りませんが
企業が法を守るインセンティブが働くほどの厳罰は与えられません。

何故なら日本は法治国家です。
法の源たる憲法を無視すれば最高裁から変えろと言われます。
憲法違反でない法律にしろ、
一つを厳罰にするとバランスを取らなければならず
他の罪も尽くを厳罰に成ります。
その時は、労組が確実に反対してきます。

それに氷河期が起ったのは新卒採用を搾ってでも今の社員を守れと
地裁で判決が出て他も尽く経営者側が負けたからです。
今以上に既得権を守る気ですか?
by 氷河期 (2011-06-13 20:02) 

古井戸

>出来ません失業します。
正社員として雇うならば新規採用を今以上に減らし
一人当たりの労働時間は劇的に増えます。

私は、派遣会社を無くしろ、と言っているのになんで<新規採用>のハナシになるの?派遣会社は元請け企業の出している金の半分以上ふんだくっているんですよ。臨時採用にしても元請けが直接雇え、というているの。


>その時は、労組が確実に反対してきます。

●それに氷河期が起ったのは新卒採用を搾ってでも今の社員を守れと
地裁で判決が出て他も尽く経営者側が負けたからです。

今以上に既得権を守る気ですか?


●の意味が不明。
今以上既得権を守るきですか?というのは私に対してじゃなく、労組に対して言うてくれ。

労組が怖い?

by 古井戸 (2011-08-30 15:22) 

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