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宇都宮健児 プロフェッショナルとは  [Ethics]

                                          

 

先日NHKで『プロフェッショナル』という番組をやっていた(プロジェクトXの後釜らしい。あの『プロジェクトX』の下手な語りが流れ出すとカラダ中に蕁麻疹が発生するので、慌ててチャネルを変えていた)。

宇都宮健児弁護士が登場。私は宇都宮さんの「消費者金融」という岩波新書を数年前読んでいる。無私の精神、というコトバがある。この人を形容するためのコトバでは無かろうか。
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn0204/sin_k62.html

番組の冒頭。都内の公園。深夜である。たむろするホームレスの男たち(ところで女性ホームレス、というのも多いのだろうか?)にビラを配っている男が入る。それが宇都宮さんだった。この番組の出だしは良かった。視聴者を釘付けにする効果がある。(宇都宮が配るビラには、『諦めずに闘おう』、というメッセージが書いてあった)番組は宇都宮氏の人柄を伝えていていた。
# 藤沢周平、山本周五郎が好き、であること。通勤電車で読んでいる。読んだ本をなにかの紙の裏に(紙を無駄遣いしない)リストアップしている。二度買いしないため、だそうだ。山本周五郎の短編にいいものがある、という。周五郎の短編が好き、というひとに悪い人はいまい(したがって、いまの代議士連中に周五郎のファンなどいまい)。
# パソコンが使えない(団塊の世代、である。しかし、宇都宮さん、PCを覚えたら100倍能率が上がるだろうに)。
# 宮部みゆきの「火車」は宇都宮がモデル。検索してみると、92年の新語「カード破産」は宇都宮の造語。新語賞を受賞している。
# 宇都宮さんは東大在学中に司法試験を合格した、が、その後の法曹活動は順調ではなかったらしい。某法律事務所で無給に近い仕事をしていた、とか。宇都宮事務所をなぜ銀座に構えているんですか?「いい質問ですね」と宇都宮は語り出す。「事務員を雇うとき、事務所が銀座にある、というと(女性)応募者が多いのです」。

と、ここまでおとなしく書いてきたがわたしは怒り心頭に発しているのである。なぜか?
この番組の冒頭、公園のビラ配りの後のナレーションで、宇都宮を
  「闇金融と闘う男」
と紹介した。取り立て屋も 宇都宮から受任通知(被害者から弁護士にまず、受任依頼をする。それ以後、取り立てを直接依頼者本人にすることは許されない。弁護士が代わって受ける)が届くと黙ってしまうらしい。しかし、これは宇都宮の活動のほんの一部にしかすぎない。たしかに、闇に向かって立つ宇都宮は、いまでは少なくなった英雄である。しかし、いま放送で訴えなければならないのはなにか?をこの番組は全く伝えていない。岩波新書で宇都宮は、一般利用者の利子をゼロに据え置いたまま、サラ金業者にはじゃぶじゃぶと金を貸しぼろ儲けしていること、中学高校生に対して消費者金融のこと(いかに恐ろしいか)をまったく教育していないこと、多重債務者はどこに訴えたらいいのかも知らない、教えられていない、という事実に怒っているのだ。岩波新書から引用してみよう。
「わが国では、多重債務者が深刻な問題となっているにもかかわらず、いまだに学校教育の中で自己破産や弁護士会などの相談窓口に関する知識や情報が全く教えられていません。このため、まだまだ多くの多重債務者が、自己破産や相談窓口に関する知識や情報を有しないため、その場しのぎの自転車操業を繰り返したり、夜逃げや自殺に追い込まれているのです」
「バブル崩壊後に生じた銀行の不良債権処理のためには、何十兆円もの公的資金(税金)が使われています。しかしながら、銀行の不良債権に何十兆円もの税金を使うのであれば、同じ規模の税金を使って、政府系金融機関や自治体の窓口における消費者・国民や中小零細事業者に対する公的低利金融制度を充実すべきなのではないでしょうか」
「これほどわが国の社会の中でサラ金が拡大しているのに、わが国の中学校や小学校においては、多重債務問題に関する教育はほとんど行われていません。
わが国の学校教育においては、出資法や利息制限法の金利規制、利息制限法の正弦利息を超える利息は支払い義務がないこと、多重債務者に陥った場合の相談窓口、自己破産や個人再生手続き、調停などの手続き、サラ金、クレジット業者から悪質な取り立てを受けた場合の対処方法、借金の保証人、借金の時効や相続などについての消費者教育はほとんど行われていません」
「「基本的人権ある」と何回念仏のように唱えても、基本的人権が守られ権利の行使ができるようになるわけではありません。人権侵害を受けた場合の相談窓口、裁判手続きなども併せて教育していかないと基本的人権は守れないのです。
消費者教育においても、「無駄遣いをしない」「クレジットやローンを計画的に利用する」というような観念的な消費者教育ではなく、自分の権利を行使する手続きや悪質業者を告発する手続きが行われなければ、社会に出て消費者被害にあった場合、全く役に立ちません。この意味で、被害にあわないための「賢い消費者」となる教育よりも、被害にあっても自らの権利を主張し、権利を行使できる「闘う消費者」となる教育が求められているのだと言えます。
そして、「闘う消費者」となる教育は、当然のことですが、自分が被害にあった場合だけではなく、他の消費者が被害にあった場合でも怒りと同情の念を抱き、共に消費者被害の根絶を目指して闘う消費者となるような教育でなければならないと考えます」

以上、岩波新書「消費者金融 – 実態と救済」の最後の部分から長めの引用をした。

しかし現実、法定上限利息も守られていない。むろん、法定利息制限を超えるサラ金業者からの支払い請求に応じる必要はない。しかし、問題は現在の制度では利用者が法律違反であることを立証するため個別に裁判を起こさねば権利を主張できない、ということだ。消費者金融に関して無知蒙昧におとしめられている一般利用者が、裁判知識などあろうハズもない。そこにサラ金業者や大銀行がつけ込んでいるのである。しかも、この利用者からみて不便な現在の制度を改革したり、より厳しい利息制限を設定する動きもあるが、先日の朝日新聞によれば、驚くべきことにそれに反対する議員がいるのだ(業者や銀行から献金を受けているのだろう。まさに、社会のゴミ、社会の敵、である。もちろん、利用者の預金金利を十年以上にわたりゼロにしておいて、サラ金にじゃぶじゃぶ金を貸し、さらに、各種手数料を平気で値上げしている銀行も同罪である。むろん、監督官庁である金融庁も、だ)。

いまやまったく頼りにならない(プロフェッショナルと呼べない)国会議員や弁護士(宇都宮のように消費者金融被害者を救う弁護士は少ない、という。儲からないからだ。番組では、一件、毎月二万円であっても何百件も引き受ければ一応の収入になる、と宇都宮は言っていた)のなかで、宇都宮のようなひとは貴重である。NHKは、公共放送というのならば、宇都宮を紹介するのではなく、引用した宇都宮のメッセージを伝えるべきではないか?消費者金融はもとより、国の金融行政のあり方を問わねばならないのではないか?どこからも広告収入を得ていません、と念仏のようにとなえていれば責任をまぬかれるとでもおもっているのか。

(追記) 広告を放送せず、受信料だけを収入源とすること、をもって、「公共放送」の定義としているらしいNHKの欺瞞については別に論じよう。

(追記2) TVが故障したので最近もっぱら、TBSラジオを聴いている。人生相談をときどき、聴くのだが、サラ金問題で悩んでいる人が予想通り多い。問題は、回答者が、的確に応えていないのだ。子供がサラ金に手を出し親に支払いを求める、あるいは、子供の行方が知れず取り立てにうるさくまといつかれる。。というナヤミに、回答者が全く答えにならない答えをしている。子供を責めたってしょうがない。現在の仕組みであれば、信用調査もいい加減、ですぐにATMから借りられるのだ。こういう質問もあった。ムスメと同棲していたマンションの相手が自殺した、という。マンションの大家がその娘の親に、その部屋が貸せなくなった、賠償をよこせ、と内容証明付きの請求をよこしたというのだ。回答者は弁護士福嶋瑞穂(おそらく、社会党党首、の、だろう)だった。血などで部屋を汚したのならともかく、こんな請求にそもそもおたおたするのはおかしいのだ。断固はねつけ、そのうえで、弁護士などに相談すればそれっきりのはなしだ。請求額も500万とか1000万とかいうハナシ。なぜ、福島さんは、そんな請求に応じる必要は絶対にありません、といわなかったのか。

悩み事はいろいろ、人生の局面で出てくる。個人の責任とせず、社会の問題として、その対処の仕方を学校できちんと教えておくべきだろう。もちろん、政府の政策にも反映すべきだ。サラ金ひとつとってみても、公的資金を低い利子で貸し付け、職業訓練なども無料、あるいは長期貸し付けにするなどの支援を公衆に対して行えば、現在定常的に年間三万人である自殺者は激減するだろう。


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コメント 3

yamatan50

こんにちは。宇都宮健児さんの「プロフェッショナル」見ました。再々放送かなんかだったと思います。司会者が無理に「プロとは?」といった質問をしてたのがこの手の番組の意図を顕わしているように思いました。個人の根性物、サクセス秘話にしておくのが無難なのでしょうか。宇都宮さんが飄々と答えてたのが爽快でしたっけ。ところでNHK、BSでやった番組も地上で再放送したりしていますが、両方放送料を払っている身としては少し変じゃないかと思います。
by yamatan50 (2006-03-20 16:41) 

古井戸

ども。
本欄に書いたかも知れないが、いまごろになってやっと、大臣が、サラ金の広告を見るのは気持ちのいいものではない、などとぶうたれてましたが、そーいう問題じゃない、とおもいますね。番組で、夜の公園で、ホームレスの男たちにビラを配る宇都宮を見て国民、とくに、裁判官、弁護士(サラ金被害者の依頼を断っている奴ら)、政治屋は何を思ったのだろうか、と考えてしまいます。女性たちはどうしているのだろうか?公園で寝泊まりするわけにもいくない?こういう境遇、あるいはこういう境遇に近い人々から自殺者が出るのでしょう。
司会者は、宮部みゆき、あるいは、佐高信や内橋克人にすべきだったでしょう。銀行・サラ金から献金を受けている議員や、財界からはNHKに抗議が来るのだろうが。

年間10万人に100万円、低利融資、で、たった1000億円。米軍へのおもいやりが年間2000億円。なんとかなれへんのか?
by 古井戸 (2006-03-20 18:17) 

古井戸

ニッポンに巣食う庶民の敵、銀行やサラ金に、天罰の下らんことを祈るや、セツ。


http://straydog.way-nifty.com/yamaokashunsuke/2006/04/post_a47a_1.html
「。。。ところが、業界側は逆に出資法上限金利を改正前の40・002%にまで上げるように、政治家等に働きかけているというのだがら正気の沙汰とは思えない。」
by 古井戸 (2006-05-02 08:00) 

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