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公共放送はNHKだけの独占物ではない [IT]

一昨日であったか、NHKがTVとラジオの同時中継で、公共放送とは何かを、テーマにディスカッションを放送していた。ズバリ、とNHKを批判していたのは金子勝だけ、という印象を受けた。仕事の合間に聴いていたのだが、金子の言っていたことは

・政府や与党に番組を事前説明するような放送局を誰も信頼しない
・予算を国会で承認しなければならない、という現制度を改正すべきである。
 つまり、予算承認と引き替えに、放送内容に意見をはさむというようなバカな制度を止めろ、ということ。
・倫理委員会を作って社内で調査しているというが、メンバがすべて社員では役に立つわけがない

これに対してNHKは反論できないでいる。NHKに対する政党の恫喝、というのは何もNHK幹部が、番組の事前説明をするため、へこへこと政府や与党幹部の呼び出しに応じて出向く、ということに限らない。NHK役員の電話番号やメルアドは既に政党与党に知られているのだから、電話一発で(あるいは、偽メールならぬ、オーセンチックな、恫喝メールで)恫喝になるのだ。政府与党あるいは(すなわち?)ヤクザ、から、NHK役員に掛かった電話と送信したメールをすべて監視し、オンブズマンと国民に、公開できるかい?

NHKは、口を開けば公共放送、というが、公共放送はなにもNHKの独占物ではない。不偏不党ということと、政府や政党批判を勘違いしないでもらいたい(中学生に対する説教のようだが)。
BBCをモデルにしているとNHKはよくいうが、NHKとBBCを比べるつもりか?ばかばかしい。
BBCも聴取料から成り立っており、不払い者は収監するなどの強硬措置をとっている。それに対し国民が強烈に非難しないのは、政府と一線を画し、批判番組をじゃかすか放映しているというその信頼感があるからである。番組の内容とその多彩さにおいてもNHKとは一桁も二桁も違う。ホームページを見れば直ちにわかる。

米国のPBS(Public BroadCast Station)もNHKに対比させられようが、PBSは企業からの寄付と、民間(市民)からの寄付のふたつからなりたっている。20年前(少し古いが)ではこの財源、ほぼ半々であった。毎年決まった時期に、キャンペーンを張り、視聴者からの寄付を募る。PBSの放映する番組はNHK BSで多数放映されているからその質の高さはご存じだろう。政府への遠慮会釈はない。ジャンジャン批判をする。ニュース番組の質も日本とはダンチである。これはキャスタの質の高さ、とそれを支える出演者の議論の上手さ、が寄与しているのであり、まったくうらやましい限りである。NHKの場合は、ニュースを含め、ほとんどすべての番組が事前の脚本通りに進んでいる。キャスタが原稿を棒読みなのはもちろん、ゲストとして呼ぶNHK記者とキャスタの間のQ&Aも原稿を読んでいるってのだからまるで、お笑いである。唯一脚本無しにしゃべっているのはクローズアップ現代の、国谷裕子くらいのもんだろう(事前の打ち合わせはあるのだろうが)。なぜ、原稿棒読みなのか? アナウンサや社員が、アドリブで勝手なことをしゃべらないように、発言内容を事前に上司がチェックしているのである。(社内検閲、ね)。だから、こういうことがよくおこる:

## クローズアップ現代♪
国谷: 今夜は経済部の 古井戸さん(仮名)に来て頂きました。
     古井戸さーん(と、顔をのぞき込む。照れちゃいます)、どぉ~~して、堀江氏は株式を何度も何度もな~んども、分割したんですかー?
古井戸(経済部):ハイッ!それは、ですねー(と、用意した、上司のチェック済み原稿の棒読み開始)。xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx

国谷: でもー、分割なんて東証は、認めてたんでしょ?東証や金融庁は今回の逮捕をどうみているんですかぁー?
古井戸: ハイッ!(と、用意した、上司のチェック済み原稿の棒読み開始) yyyyyyyyyyyyyyyyy

国谷: じゃ、経済学者や法律家の意見はどうなんでしょ?
古井戸: ハイッ! (と、用意した、上司のチェック済み原稿の棒読み開始) zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz

国谷: じゃーねッ、あなたッ、つまり、古井戸さん自身は、どーゆー展開になる、とおもってらっしゃん、すか?ライブドアの行く末。。株主の行動。
古井戸: エッ?(息、一瞬停まる。そんな質問、想定外、という表情。。。目を白黒)、エネチケでは、。。滅私奉公。。則天去私。。。sidoro modoro sidoro modoro

国谷: しょーないわねぇ。。あなた、ライブドア株もってんでしょ!?(大きな、美しい眼、でキッとにらむ)
古井戸: エエッ?! (ゼック。泡を吹いて倒れる)

国谷: (カメラを向いて)え~。。視聴者の方々に、みっともない場面をお見せしました。(気を取り直し、キッと、カメラをにらむ)。。今やニッポンのマーケット、それに。。。わがNHKも、バッポン的な変革が要請される時期に来ていることが明らかになったようです。。では、今夜はこのへんで失礼しま~す!
##

高木徹「戦争広告代理店ーー情報操作とボスニア紛争」(講談社)をご存じだろうか。高木はNHKの職員である。NHKが2000年頃放映したNHKスペシャル「民族浄化 ユーゴ情報戦の内幕」はかなり評判になった。NATOによる空爆を引き出したのは民間情報会社ルーダーフィン社による大宣伝があったからだ、という。戦争の裏面を描いた本である。
木村元彦「終わらぬ「民族浄化」セルビア・モンテネグロ」(集英社新書)は、高木のこの本を(つまりNHKの番組も、だ)批判している。

「戦争の起こる前にこの宣伝活動は行われていたのだから、なぜ、紛争時にルーダーフィン社を批判しなかったのか?すべて終わってしまったあと種明かしのように見せられると、紛争をネタとしか考えていないのか、とおもってしまう」

この批判、なにもコソボ紛争だけに該当するのではないことは視聴者が感じているだろう。
すなわち、問題(政治問題、社会問題)が発生する兆しも情報もおのれ等が握っているにもかかわらず、放置する。問題が発生する、世間が騒ぎ出す、と小出しにする。すべてが明らかになったあと、報道してもとばっちりは受けない、ということが明らかになって報道をし出す。風見鶏報道、である。だれが、こんな放送局(あるいは新聞社)に金を出せ、というのかい?新聞社ならば新聞を購読しなければいい、という選択の自由がある。購読数がへれば、背に腹は代えられぬから俺等の報道姿勢のどこがまずいのか?と考えるだろう。チンタラ報道をしていても実入りが変わらなければ現在のNHKのように質の低い番組を垂れ流すことになる。戦い終わって日が暮れたあと、の情報などはくず、である。戦いの渦中である程度の危険(しかも、ペイする危険だ)を侵さなければ有用な報道はなしえない、ということをBBCや米国のプレスは、過去、権力との身を切る戦いの歴史で示した。NHKはどのような戦いをやってきたというのか?

NHKの誤解は、能力もないのに自分たちで番組を作ろう、としていることである。なぜNHK職員が経済や時事や外交、政治その他のニュースや解説、番組作りにしゃしゃり出てくるのか?番組作りは外部のプロフェッショナルにまかせなさい、ということだ。米国PBSの番組はほとんど国内外からの独立プロダクションが製作している。新聞の番組評では、保守リベラル、双方から、けちょんけちょんに貶されている番組もある。すべて放送しろ、ということだ。評価は視聴者がするのである。

PBSの番組には企業の宣伝も入るが、「この番組はabc社の寄付により成り立っています」というアナウンスと静止画による企業名が画面に写るだけのシンプルなものである。目の肥えた企業や視聴者なら、番組内容にけちを付けてスポンサーからおりたりすれば、社の沽券にかかわる、とおもうだろう。こういう番組に寄付をすることで企業のプレスティージもあがるのである。

NHKも無駄なバカ番組(軽薄歌合戦など)に金を掛けたり、オリンピックや相撲、高校野球に入れ込まず(そんなものは独立系プロダクションが必要あればやる、必要なければつぶせばよいのだ。NHKが支援する必要などさらさら無い)、余計な「責任」などを背負い込まないようにしてもらいたい。

コンテンツ、は市場に自由に作らせる、ユーザ自身の選択に任せて自由にプログラムさせる。NHKは設備提供だけをおこなう(だから、税金からまかなってもかまわないが、税金を使う理由もない)。デジタルになったらNHKはどのみちサービスプロバイダのひとつになる、のである。つまり、コンテンツをユーザが自由に組み合わせ可能にする。(もちろん、プロバイダ(たとえばNHKなど)が何通りも組み合わせを用意して、お任せコースをつくる=従来の放送型サービス、のも、自由)。
これを称して、「双方向サービス」、という。NHKにとっては新規だろうが、ネットでは当たり前のことである。学校の授業にある時間割表(小学生から大学まで)。これを個々の生徒(学生)が都合にあわせてこしらえるようなもの、である。すでにMITなどでは大学の授業をネットで公開している。ネット授業が世界的になれば、月曜の第一時間はMIT、第2時間はパリ、第三時間はメルボルン。。の講義を自由に世界中どこの学生でも聴講できるわけだ。もちろん、昼間働いている学生は夜間授業も簡単に組み込める。授業を例に取ったが、ニュースであろうと、ドキュメンタリであろうと、ドラマ、映画、であろうと、同じことだ。

電話は固定電話から、携帯電話へと、大変貌を遂げている。これは個人の好みに合わせた情報収集と送受信を可能にする、という文化生活スタイルに変わったことを意味する。NHKの頭は未だに固定電話から抜けきっていないのだ。インフラとしても光が全家庭に届けば、家族構成員ごとに好みの映画や番組のアーカイブを瞬時にダウンロード可能となるのだ。NHKが旧態依然たる「放送」制度にしがみついていると、いつしか外堀、次に内堀が埋まり、崩壊する日も、近いだろう。

なんだかNHKへの暖かい、激励メッセージで書き込みを締めたようでホッと、している。


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三上

原稿棒読みの裏にそんな事情があったとは、知りませんでした。
今後は、背景に潜む悪の息吹を感じ取る意気込みも持ち合わせながら、全ての番組、全てのブログを見ていこうと思う所存です。

貴殿の文章が無料で読めて幸せです。この調子でどんどん書いてください。
by 三上 (2006-03-24 17:28) 

古井戸

なぜ、原稿棒読みをするのか、は、元NHK記者をされていた方がメルマガで述べられたのでまちがないとおもいます。これではかりに能力があったとしてもテッドコペルやピータージェニングズは出てくる基盤がない。このグローバル時代になさけないことです。

pm10時のニュース番組でNHK記者を呼んで、キャスタが質問するときにも、原稿を用意して棒読みしている。つまり、あらかじめQ&Aを用意しているわけです。白ける、ったら、ありゃしません。これでは、緊急時に飛び出して待ったなしのレポートなどできるわけもない。

NHK内部でこんな不細工なしきたりはやめろ!という声が出てこないところも絶望的。

要は、大人が見るに堪える番組がない、ってことです。30年前と違うんですから。いま、Web進化論じゃないけど、只で、海外の上質なニュースや情報がドンドン読める時代、みんなPCやケータイで情報通になっているのにNHKだけ遅れている。強化訓練するひつようありますね。
by 古井戸 (2006-03-24 17:56) 

ペンギン

興味深く拝見させていただきました。1年以上も前の記事にトラックバック頂きましたBlog管理者です。
海外の放送メディア状況に通じていない私としては、目から鱗の内容ですね。
他カテゴリーの記事も読みたく今後RSS取得して拝読させて頂きます。
TBさせていただきました。
by ペンギン (2006-12-28 22:50) 

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