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リチャードリーヴス 『アメリカの汚名』、政治屋と科学者の犯罪 [Tragedy]

本日の朝日書評欄で保阪正康が取り上げている。原本Infamy(屈辱)は2015年、米国。著者Richard Reeves。米国アマゾンでは120件前後の書評がついている。だが、真珠湾攻撃後の日系人強制キャンプに関する書籍は数多くあり、本書のなにが新しいのか、は保阪の書評を読むだけでは不明である。Infamyとはルーズベルト大統領が真珠湾攻撃後、議会で発した言葉である。真珠湾攻撃後、日系人キャンプに収容されたのは、れっきとした米国市民権をもっている日系一世、二世の人々である。1985年にレーガン大統領が本件を、公式謝罪し、補償金(記憶に選れば一人あたり数百万円)を支払った。それ以後、ほとんどの米国高校教科書はこの強制キャンプを取り上げているということだ。私が初めてこの日系人強制キャンプのことを知ったのは、Stud Terkelの1985年インタビュー本、Good WARを読んだときである。(第二次大戦を米国人は良き戦争=Good Warとして記憶しているという。No-Good War=Vietnam戦争などと対比してか?) インタビューに出てくる日系二世の男性が収容所のつらい思い出(とくに両親の)を語るとき、たびたび嗚咽し、インタビューが中断する。

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Ken Burnsの最近作はViet Nam Warである。PBSから放映された。dvd10枚組、ただいま鑑賞途中。

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米国アマゾンを検索すると、関連本が多く出版されていることがわかり、なかでも、2016年刊行のThe Train to Crystal City: FDR’s Secret Prisoner Exchange Program and America’s Only Family Internment Camp During World War II  が450件前後の読者評を得ている。 わたしは、もちろん未読だが、アマゾンの紹介によると内容は、日系人強制キャンプ以上におどろくべきものだ。米国政府が関与したスキャンダルである。同じく強制収容に関するものだが、収容の目的は、戦争に関連した米国人の外交官、軍役、ビジネスマンと、捕虜交換の目的で米国市民権をもっている日本人(日系米国人)、イタリア人、ドイツ人を強制収容し、テキサス州Crystal Cityのキャンプに強制収容した、というものである。著者は政府の命令書を証拠として持ち出している。事実であれば、もちろん、スキャンダル=犯罪である。


The Train to Crystal City  クリスタル市行き列車



日系人強制収容に関してはアマゾンの上記書籍を検索すれば関連本として多くの本がリストアップされている。わたしは、昨年、Ken Burns(米国ドキュメンタリー映像作家、最新作はベトナム戦争Dvd&Bluray 6巻)が10年前に発表した第二次大戦を戦った米国人を描いたThe War全六巻をみた。そのなかで、強制収容された日系米国人、そして、日系人だけで部隊を編成し欧州戦線で活躍した舞台の生き残りを登場させている。もちろん、ハワイ衆議院のDaniel Inouyeも(頻繁に)登場する。


Ken Burns: War   http://www.pbs.org/thewar/ 米国PBSで放映された作品である。


米国の戦争犯罪に関連した文書、あるいは、日本との密約文書などは公文書として(日本のように隠匿したり、破棄されることなく)、研究者が閲覧できるためあらたな研究が続々発表される。一昨年であったか、NHKがインパール戦線の詳細を主として英国資料によりドキュメンタリーとしていた(インパール線に参加した元日本人兵士が、兵士の人肉を食うたこと、そして、人肉を食料と交換したことが元兵士の口から語られた。死の直前になれば、戦友会の締め付けからも解放されるのだろう。それを狙ったのがわが日本放送協会である。死の直前にならねば放送しないのである)。


今年は、731部隊(旧満州国ハルピンに建設された陸軍の医学研究所)の事跡をかなり詳細にNHKが報じた。これも、日本で資料など皆無(陸軍と政府が処分したのである。研究成果はすべて米軍が関連戦争犯罪者の責を問わない、という条件で本国に持ち去った。米軍は日本に資料のすべてを返還した、と言っているが防衛庁(当時)は知らぬ存ぜぬをつらぬいている(731関連著書がある青木富喜子による)。NHKの報道は、ソ連が満州で捕捉した731関連医師を独自に聴聞して得たものである(鮮明な録音テープがあり、ソ連側の質問に、医師らが何を行ったか、ハキハキと答えている)。


NHKスペシャル 731部隊の真実 https://www.youtube.com/watch?v=S3yKYEoySJ8 (動画)


番組では生体実験を行った731部隊メンバーの出身大学(や専門学校)のみ、を示していた。いずれも高学歴である。聴聞ご日本にもどって、大学、医薬会社などに散っていったのである(薬害を起こしたミドリ十字の幹部も731の生き残りであり、原爆被害調査で米軍に協力したのも彼らである。本件はすでにNHK報道を元にブログ記事とした)。 生体解剖、と、原爆。この日本軍と米国の重大な戦争犯罪の隠匿に医学者が率先して協力したのである。


山本義隆の新著『近代日本150年』には731への医学者の関与、原爆調査への関与、が全く記されていない。

731、日本の原爆開発と広島・長崎原爆調査報告、原発(事故を阻止できずさらに、建設を続けている)への科学者の関与を述べないで日本の科学史は語れない。


封印された原爆報告書~米国占領下の原爆調査



放射線学会と731部隊



731部隊と山下俊一








            

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