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雨月物語 Ugetsu The Criterion Collection [Art]

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Ugetsu The Criterion Collectionが届いた。bluray版じゃなく、出費節約、dvd版を購入した。blurayと遜色ないくらいに本編の画面はクリア。今持っている廉価版dvdとは当然ながら比較にならない。二枚組である。ディスク二枚目は特典映像として新藤兼人『ある映画監督の生涯』が全編収録されている。新藤兼人が、師ともいえる溝口健二の生涯をインタビューで追ったすばらしい作品である。溝口の紹介としてはこれ以上のフィルムはあるまい。ただし収録バージョンには日本で発売されている『ある映画監督の生涯』についている音声解説(新藤兼人+佐藤忠男。とても有用)がない。


ディスク1には本編と、関係者へのインタビューが納められている。篠田正浩(松竹・小津の助監督)、田中徳三(雨月の助監督)、宮川一夫(雨月のカメラ)。篠田は溝口に直接は関係ないが、当時、小津の助監督をつとめていたこともあり、小津と溝口の比較、雨月の鋭い解説(雨月とシンクロしているイタリアンネオリアリズム、早坂文雄の音楽など)を披露している。田中は人間溝口の生態を解説。依田のシナリオが撮影現場でほぼ毎日、何回も書き直されているのが(書き直しの都度、依田を撮影所に呼びつけ、依田自身の手で書き直させた)、当時の実物シナリオを見せてもらってよくわかった。俳優もシナリオライターもトコトン、搾り取る溝口。溝口は俳優にどういうふうに演技しろ、とか台詞をこう言え、とか具体的な指示を一切出さない。(新藤兼人にいわせればそれはずるがしこい監督術の一つ。もし言われたとおりにやればOKを出さざるを得なくなる。溝口の要求する演技は言語で指示できるものじゃない、ということだろう)言葉の指示で表せないサムシングを俳優自身でつかめ。他の監督なら、自分でカメラを覗いて構図などを指示・注文することもある。が、溝口は一度として自分でカメラを覗いたことはない。カメラマンや俳優にお任せである。満足するまでひたすらやり直させるのである。


俳優に対する溝口の口癖。反射(リフレクト)がありません。状況に反射してください!


宮川がインタビューで興味深いことを語っている。小津と違って溝口の画面はつねに動いている。クレーンやレールを使う移動。そして、カメラが静止ということは全くない。比喩ではなく、全くないのである。クレーンで撮影時、一時的に静止しているように見える画面も、かすかに動いているのである。そう思って見直せば確かにフレームが微動している。これは意図的にそうしているのである。観客に、不安定感を与えるためである。むろん、実験を繰り返し、その効果を溝口が納得したうえでの操作である。


宮川君、映画とは巻物だよ。クローズアップなどは不要、画面が(巻物のように流れて、一時的に)止まるところ、そこがクローズアップなんだ。 宮川が語る溝口の弁である。 


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早坂文雄。映画音楽の古いスタイルを完全に洗い流した(篠田)


早坂、宮川、宮口精二、京マチ子。黒澤・羅生門と同じスタッフによる一世一代の快作(篠田正浩によれば溝口も予期しなかったようなミラクル)。当時の大映は最強であった。


追記: 宮川へのインタビュー、1992年収録。「この頃のTVドラマは全然つまらない。。。台詞を聞かなければ意味がつかめない。ラジオドラマと同じだ。 絵(画面)が何も語っていない。サイレント映画はなんだったのだろうか。」



米国アマゾン ugetsu



criterion 雨月の特典

TWO-DVD SPECIAL EDITION FEATURES
-New 4K digital restoration undertaken by The Film Foundation
-Audio commentary by filmmaker, critic, and festival programmer Tony Rayns
-Kenji Mizoguchi: The Life of a Film Director (1975), a 150-minute documentary by Kaneto Shindo
-Two Worlds Intertwined, a 2005 appreciation of Ugetsu by filmmaker Masahiro Shinoda
-Process and Production, a 2005 interview with Tokuzo Tanaka, first assistant director on Ugetsu
-Interview from 1992 with cinematographer Kazuo Miyagawa
-Trailers
-An essay by film critic Phillip Lopate


このような溝口も国際的な評価や名誉には弱かった。人間的にはくだらない、黒澤と同じく、凡庸なのである。

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