SSブログ

TPP批判 ~ 異常な契約、平成の「属国」化 [Failure]

TPP批判を大手新聞はまったくやろうとしない。

環太平洋戦略的経済連携協定TPPTrans-Pacific Partnership、またはTrans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement) 

雑誌『世界 12月号』の編集後記(岡本厚=編集長)がコンパクトなTPP批判を掲載しているので全文転載させてもらう(岩波書店のHPからhttp://www.iwanami.co.jp/sekai/index.html)。交渉相手(ベーコク)が いらっしゃい、いらっしゃい!と手招きしている、ということは~、我が方に不利な契約ではないのか?と誰でも一応は警戒するものである。この国の馬鹿は大股開いて貞操(てーそー)を捧げに行こうとしているのだ。呆けたマスゴミはあいもかわらずダンマリを決め込んでいる。

 

 

編集後記
(2011年12月号)

岡本 厚


 TPP (環太平洋経済連携協定) について、本誌はすでに今年4月号で特集を組んでいる (「TPP批判──何が起きるか」)。発売直後に3.11大震災と原発事故が起きたため、読者の印象は薄くなったかもしれないが、そこで指摘した問題点も、また本誌の立場も変っていない。
 驚くことに、それから半年以上も経ったにもかかわらず、「TPPの (24の分野における) 具体的な交渉内容は明らかにされていない」(
金子 勝氏本号論文) というのである。
 具体的内容も明らかにせず、「TPPお化け」(前原誠司民主党政調会長) などと問題を軽視し、慎重論を揶揄するような態度は無責任である。
 さらに驚くのは、中央紙の社説をはじめ、ほとんどのメディアがTPP参加賛成の大合唱であることだ。しかも、その論拠が、具体的内容に即してメリット、デメリットを冷静に分析した上での評価でなく、「平成の開国」論だったり、「米韓FTA (自由貿易協定) 締結に遅れるな」論だったりする。
 4月号の繰り返しになるが (ぜひ再読をお願いしたい)、日本は世界貿易機関 (WTO) の加盟国であり、12ヵ国とFTA、EPA (経済連携協定) を結んでいる。平均関税率も米国や韓国より低く、すでに十分以上に「開国」している。
 「米韓FTAに遅れるな」論にいたっては、何をかいわんやである。FTAとTTPはまったく違うし (韓国はコメを例外項目とし、中国との間でもFTA交渉を進めている)、それでも農業への大打撃を免れない韓国にとって、対米FTA締結が吉と出るか凶と出るかは、しばらく見てみないと分からないことだ。ファシズムと共産主義の勃興に浮き足立ち、「バスに乗り遅れるな」と新体制運動に邁進して破局にいたった1930年代の愚を、また日本は繰り返そうというのか。
 TPPの目的は、外資の絶対的な自由の保障であり、それは農業のみならず、医療、労働、郵政、保険、政府調達など、国民の安全や生活の安定に大きな影響を及ぼす。具体的な交渉内容を明らかにした上で、徹底的な国民的議論がなされて当然だ。
 11月中旬のAPEC首脳会議までに交渉参加を決めなければならないという「期限」もおかしい。来年の再選への好材料にしたいという、オバマ政権の都合に過ぎないではないか。
 交渉にとにかく参加しなければ「置いてけぼり」にされるという議論も理解できない。TPP交渉には中国も韓国もインドも含まれていない。交渉参加国のGDPに占める日米両国の割合は9割に及ぶ。日本が参加しなかったら、この交渉自体に意味がなくなるのではないか。
 米国主導のTPPには、「東アジア共同体」論に対抗する思惑がある。成長著しい中国から日本を引き離し、米国のブロックに抱き込んでおきたいというのである。その意味では、中国脅威論を煽って普天間基地の辺野古移設をごり押ししようとする態度と同根である。
 米国は重要な友邦であるが、中国もまた重要な隣邦である。経済は切っても切れない関係にあり、これからともに地域や世界の問題に取り組んでいかなければならない。
 世界経済 (本号特集) を見ても政治を見ても、私たちが世界史的な転換点にいることは明らかである。もはや冷戦思考の惰性から解放されなければならない。政治家も官僚もメディアも問われている。

世界12月号の金子勝の記事、平成の「属国」化 TPPの嘘、から引用(p353~35):

TPPでは農産物の市場アクセスの問題はTPPの一つの分野にすぎず、計24の分野における政策・制度の領域が交渉の対象になっている。ところが、異常なことに、交渉参加の可否を決定すべき時期が迫っているにかかわらず、TPPの具体的な交渉内容は明らかにされていない。24の交渉分野には、自動車や農薬の安全基準、高額医療と医療保険のありかた、移民規制、弁護士・医師・看護婦などの免許、公共事業の入札要件の緩和なども含まれる可能性がある。いずれも大きな問題だが、APEC直前にも拘わらず、いまだに外務省・経産省などはその詳細を明らかにしようとしていない。

(中略)

これらを全部実施すれば、国の形そのものが変わってしまうだろう。APECまで1ヶ月を切っているにもかかわらず、政府の「植民地」的な官僚たちは、何をどこまで交渉するのか、ほとんど明らかにしていないのだ。異常な事態というほかにない。まず何より、TPP参加によって、どのような問題が発生するのか、政府が明確にして国民的議論を喚起することが必要である。少なくとも、米国側が何を要求しているのかを明らかにせず、国民に対して情報を隠して「だまし討ち」を仕掛けようとしていると言われても仕方がないであろう。

この間、不良債権処理、イラク戦争、小泉「構造改革」の失敗が続いているにもかかわらず、この国では誰一人として責任をとらず、真摯な総括もしないまま、企業組織や官僚組織の内部を順送りで昇進してきたリーダーたちが居座っている。彼らは、もはや正面から国民を説得することができず、ついには国民に情報を隠して、失敗した作戦の継続を図っている---- まるで、第二次大戦末期と同じような状況だ。

(以下略)

 

 ジェーンケルシー女史(http://web.me.com/jane_kelsey/Jane/Welcome.html)の新刊が邦訳された。毎日新聞による書評を引用する(全文)。

今週の本棚:松原隆一郎・評 『異常な契約 TPPの…』=ジェーン・ケルシー編著

 ◇『異常な契約 TPPの仮面を剥ぐ』

 (農文協・2730円)

 ◇社会的規制の撤廃がもたらす危機

 反TPP(The Trans-Pacific Partnership Agreement=環太平洋経済連携(パートナーシップ)協定)の立場を露骨に示す邦題だが、実は原題を忠実に訳している。編著者はオークランド大学教授。TPPを立ち上げた4カ国のひとつであるニュージーランドと続いて参加した豪州から19名の法律家・エコノミストが寄稿して、2010年にオバマ政権主導で推進されるようになったこの協定につき様々な分野と視点から精緻に分析している。

 日本では昨年末に菅前首相が「国を開く」というキャッチフレーズで関係国との協議開始を指示、大震災でいったん先送りしたものの、今また野田首相が農業再生策に絡めながら参加に熱意を示し始めた。

 けれどもわが国での推進論には首を傾(かし)げたくなる。関税撤廃で貿易と投資を自由化すれば、製造業は一層の競争力を得て輸出を増やす。一方、これまで保護してきたにもかかわらず担い手が高齢化した農業も、開国で競争力をつければ再生する。そう主張される。だが(外国との比較で)競争力をつけたからといって、その産業が輸出できる(もしくは輸入財に負けない)という保証はない。

 仮にわが国のすべての産業が世界一の技術力を誇っているとしよう。日本製品は、いったんは自動車からコメに至るまで、大いに輸出されるだろう。けれどもそれで貿易黒字が貯(た)まれば、中長期的には円高になる。外国からすれば何%かの価格引き上げと同じことだから、それに耐えられない分野は輸入に回るだろう。

 この円高を回避する工夫が、ゼロ金利だった。外国のたとえばドル資産の方が利率が高いから、それに投資すべく円でドルが買われて円安になる。

 ここで犠牲になったのは、自動車産業ほど抜群に世界一とはいえず、円高の下で外国に勝てなくなった産業だけではない。金利を当てにできなくなった預金者やドル建てで人件費の高騰した労働者も、自動車輸出の犠牲になっている。

 推進派は「競争力幻想」に微睡(まどろ)んでいるのではないか。だが市場はオリンピックではない。すべての分野が勝つことは不可能である。これはリカードの比較優位説を持ち出さなくとも普通に推測できることではないか。

 日本の農業は、外国より高品質の産品を作っても疲弊するに違いない。日本の自動車を超えるほどの比較優位を持つことは困難だからだ。ライバルは外国の農産物というより、日本の自動車産業である。

 それだけではない。さらに重要なのはその先だ。本書には多様な議論が混在するようで、その先を見据えている。TPPは市場競争からの保護につながる「経済的規制」の撤廃を唱える協定には止(とど)まらない。「社会的規制」をアメリカが自己都合で変えさせてしまう点でこそ「異常な契約」なのである。

 本書で取り上げられる推測を列挙しよう。一つは畜産物への抗生物質の使用基準、野菜への遺伝子組み換え、そして残留農薬基準など食品の安全基準について、通商代表部がアメリカの国内基準を押しつけるだろうということだ。

 二つには、アメリカは知的財産権の強化を主張するだろう。医薬品の特許権期間を延長したり、ジェネリック医薬品の製造に必要なデータを秘匿したりして、途上国における医薬品価格を引き上げるだろう。

 三つには、投資家の求めに応じて、リーマン・ショックの原因となりここ数年で課された国際的な資金移動や金融に対する規制の撤廃が、早くも進められるだろう。これにより政府は金融危機を防止する手立てを制限されるが、それだけではない。規制を課した政府が、企業や投資家に告訴されるだろうというのだ。

 これらはいずれも貿易と投資の自由化を名目として、各国が独自に定めてきた社会的規制が撤廃されるということである。しかも驚くべきことに、TPP交渉は締結まではテキスト案やペーパーを公表しない秘密主義をもって行われている。ただでさえ社会の骨格を築く社会的規制が外圧により撤廃されるというのに、一般市民は交渉過程で協定の内容を読み、影響を評価することができないのだ。

 そのうえ交渉に加われるのは政府関係者に限られ、輸入から直接の大打撃を受けるであろう先住民や労働組合は話し合いの場を傍聴することも許されない。秘密主義はオバマ大統領が、米国内で批判勢力をかわすためというのだが。

 これらはニュージーランドや豪州の体験から推測されたことである。日本で注目されている農業だけではない、TPPは民主主義すらも危機にさらすだろうというのが、本書の予言である。

 「サムソン憎し」というのが財界推進派の心情に違いない。だが、たとえサムソンに勝てたとして、それは国民に食料の安全や安価な医薬品を放棄させ、金融危機リスクにさらしてまで得るべき勝利なのか。政治的主権を捨てるほどの利益がもたらされるのか。再考を迫る一冊だ。(環太平洋経済問題研究会ほか訳)

毎日新聞 2011年10月23日 東京朝刊

 

参考: TPPの対象分野は、以下の24分野。

1.主席交渉官協議
2.市場アクセス(工業)
3.市場アクセス(繊維・衣料品)
4.市場アクセス(農業)
5.原産地規制
6.貿易円滑化
7.SPS
8.TBT
9.貿易救済措置
10.政府調達
11.知的財産権
12.競争政策
13.サービス(クロスボーダー)
14.サービス(電気通信)
15.サービス(一時入国)
16.サービス(金融)
17.サービス(e-commerce)
18.投資
19.環境
20.労働
21.制度的事項
22.紛争解決
23.協力
24.横断的事項特別部会


菅首相が言い出した「平成の開国」をいまだに使う論者が新聞などにはいる。米国(ハリス)の恫喝と、国際交渉能力のない幕府官僚により締結させられた幕末の開国により、いったいいくらの資産が日本から流出したか知っているのだろうか?さらにこのとき締結した不平等条約でいかに明治政府が苦しんだか。安政の大獄、や、桜田門外の変、をこそ思いだしてもらいたいものだ。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。