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トヨタの緊急記者会見について [Ethics]

きのうNHK夜9時のニュースでトヨタ(品質担当、横山常務)の記者会見を放映していた。

社長ではない。なぜ社長が出てこないのか?にまず引っかかる。社長は何にも知らないから?今どき技術的な説明をできない社長がクルマ会社を統率できるとは驚きである。(本田宗一郎なら出てきたか?宗一郎は現場担当者並みにクルマを知っていた。みずから工場に出向いて担当者のプレゼンを求めた)。

番組で記者会見に臨んだトヨタ重役の説明によれば、これ(プリウスのブレーキ問題)はリコールに値する問題と考えていない、と。

内外の担当記者の前で堂々とこうしゃべるのだから、トヨタ社内では異論反論が渦巻いているのだろう。謀略だ!とか。とんでもないハナシである。株主やユーザはこういうトヨタに満足か?

説明によれば、プリウスの場合、ブレーキを掛けて、低速になると、制動が電気系から機械系に切り替わる瞬間がある、その瞬間、ドライバは足裏から伝わるブレーキ感覚がなくなる、という。トヨタに寄ればそれでも押し続ければブレーキは掛かるのだから問題はない、という。しかもこれをトヨタが気付いたのは昨年末のこと。プログラムの手直しをして、以後の新車に搭載しているという。

この説明はどうなのか?足裏の感覚は敏感なものだ。コンマ何秒の無感覚時間は問題としないのか?(しかも手直しをした、というのだ)。ドライバにとっては人間工学がすべてではないのか?

米国政府の担当部局からトヨタ本社に直接電話を掛けたときにはトヨタの社長が応対したという。きのうの記者会見は海外記者もたくさん押しかけた。記者会見は国内外の政府や競合メーカそれに、世界のユーザや販売店、株主が注目をしているということがわかっているのか?

横山常務がリコールに値しない、と開き直るのではなく、社長が出てきて、技術的な説明をする、すなわち、ブレーキはきちんと掛かるが、ブレーキペタルへの伝達がユーザフレンドリでなかった、したがって、すでに販売したプリウスも新プログラムに置きかえる(リコールと言うことだ)、申し訳ない、と説明すればなんの問題もなく受け入れられるだろう(プログラム変更なら、基盤チェンジで修理店作業はあっという間に終わる)。

国交省と長年やってきたリコール隠し(トヨタだけじゃないが)の残滓は役員にものこっている。

米国で問題が発生した後でもこれである。海外メーカは大喜びだろう。

追記:

横山常務の説明がネットで読めるので引用する(上記の私の説明は放送の記憶から書いた。一部正確性を欠くが訂正しない。下記記事により補正願いたい)。

トヨタ プリウス、ブレーキに“空走感”を感じたら

2010年2月5日(金) 17時43分
##引用
トヨタ自動車は、新型『プリウス』が、ある条件のもとでブレーキを操作した場合、ユーザーに空走感を抱かせる現象があることを4日、明らかにした。この現象が、安全に関わる問題なのか、それとも佐々木副社長がいう“フィーリング”なのかは、同社と国土交通省で調査中だが、もし新型プリウスユーザーがこうした状況に遭遇した場合は調査中ではすまない。どうすればよいのか。

品質保証を担当する横山裕行常務役員は、新型プリウスで起きているブレーキの空走感は「一定の踏力で軽いブレーキングを続けた場合、路面の状況によっては、ブレーキの反応がわずかに遅れるという現象」と説明する。

この空走感が生じる恐れがあるのは、例えば、路面が濡れたり、凍結したりして片輪だけ回転数が変わるような場合に、ABS(アンチロックブレーキシステム)が作動した時だ。この瞬間、プリウスでは、回生ブレーキが油圧ブレーキに切り替わる。

横山氏は、「雪道などでガガガッと車輪が動く経験などでご存知だと思いますが、ABSは車輪のロックを防止するために、ブレーキを一時的に緩めるという機能を持っている。この時(新型プリウスは)回生ブレーキを油圧ブレーキに切り換わった時に時間差が生じる。そこでいろいろなお客様からご指摘をいただいているのが”空走感”。短時間ブレーキが利かなくなることがある」と説明した。

回生ブレーキとは、ハイブリッド車や電気自動車(HV/EV)特有の装置で、加速に用いる電気モーターを逆回転させることで減速させると同時に、発電をする仕組みだ。ガソリン車でいうエンジンブレーキとほぼ同じで、下り坂や、ごく緩いブレーキングのときに作動するものだ。ところが、そうした緩やかなブレーキングでわずかにスピードを制御している場合に、先のような条件でABSが作動すると、その車輪制御のためにメリハリのある大きな力を必要とするため油圧ブレーキに切り換えなければならない。このわずかな切替時間が空走感につながるというものだ。

しかし、ユーザーにとっては、いくら瞬間のことであっても、予測がはずれてスピードが落ちなければ運転中のパニックにつながる。誰もがこのくらいのブレーキングであればこのぐらいスピードが落ちるという予測のもとに運転しているからだ。

その対処法として横山氏が説明したのは「踏み増す」という行為だ。運転中に空走感を感じるということが起きても、ブレーキペダルをより多く踏み込めば、その踏力に比例してより大きな減速を見込むことができる。
##引用終わり
 
 
当然のことだが、車を替えれば、ハンドルやブレーキの重さ、利き具合は異なる。 ドライバは別のクルマに乗っても(たとえばレンタカーや知人の車など様々な車種に乗り換えても)最初のとまどいはすぐに吸収して問題なく運転できるようになる。苦情が多い、と言うことは、通常の運転感覚を越えた感覚(反応)をドライバに与えているということである。人間が手と足で加える操作に対して、クルマがどういう反応を示すか(移動方向や速度)を、感覚器官、とくに眼と手足でフィードバックとして感じながら瞬間的に微調整(ハンドルやアクセル、ブレーキの切り具合、踏み具合)をくり返すのが<運転>というものである。上記の記事で言っているとおり、予測がなければ運転などできない。前を子供が横切っても急ブレーキを踏まないのは、この程度の距離なら、この程度の踏み込みでゆっくり停まることができる、と予測するからである。
 
 
ユーザーにとっては、いくら瞬間のことであっても、予測がはずれてスピードが落ちなければ運転中のパニックにつながる。誰もがこのくらいのブレーキングであればこのぐらいスピードが落ちるという予測のもとに運転している

 

こういうことである。

ブレーキペタルとは何のためにあるのか?をトヨタは理解しているのか?ペダルは医者の聴診器と同じであり、しかも、運転行為と直結している。眼で確認したクルマの速度と位置情報をもとに、最適な強度(急ブレーキか、弱いブレーキか)が適切かを予測し、ブレーキペダルを踏み、速度位置の変化を観測してブレーキヲ再調整する、これを瞬時に時々刻々行う。このときブレーキペダルは制動を掛ける、以外に、押すときドライバの足に反作用を与えて、現在の押しの強さを自覚させる役割を負っているのだ。ブレーキペダルの機能を、手で回す目盛り付きのブレーキネジ、で代行できるか? できはしないのである。空走感覚を与える、ということは、ブレーキの機能の欠落ということだ。つまり、押している感覚が無いのに制動自体はクルマに掛かっているのだからよい、という問題ではない。どの程度の制動を掛けているかを、足に伝えるというフィードバック=伝達機能も同等に重要なのである。人間=ドライバに現在の運転情報を(目視、体感)集中し、ドライバはすべてを制御できる、という感覚を無意識にもてないとドライバがパニックになるのは当然のことだ。

 

横山氏が説明したのは「踏み増す」という行為だ。運転中に空走感を感じるということが起きても、ブレーキペダルをより多く踏み込めば、その踏力に比例してより大きな減速を見込むこと。。。

 

プリウスの構造は従来型普通車とは異なるにしても、運転技術上は特殊なクルマではない(として販売されている)。たとえば普通車免許保持者が大型車をいきなり運転できないのは大型には独特な運転技術が要求されるからである。いくら新機能を搭載しても、普通車免許の持ち主ならば違和感なく操作できる仕組みを作りあげるのが技術者の仕事であり、オートメーカーの努めではないのか?とくにブレーキは安全運転にもっとも重要な操作であり、一瞬の遅れが事故につながるのは言うまでもないことである。製造した側は仕組みの裏表まで知っているのだから、効き方が普通車とは異なる、ということを知っていても、使う側は従来の運転技術で十分として乗るのだ。ドライバに過大な要求をしてはならない。技術的な欠陥ではない、というのであれば、せめてプリウスのブレーキ特性を組み込んだシミュレータを販売店は用意して買う前、乗る前に体験させること、これを国交省と警察はメーカに義務づけなければならないのではないか(新車種について、要求される運転特性基準というものはないのか?国家は製品検査をせずにメーカを信頼、型式認定しているのか?クルマの仕組みが大きく変わろうとしている現在気になることである。シートベルト、エアバッグの装備、車両の破壊試験などより遥かに安全にとって重大事である)

 

追記:2月7日

記事を読みなおして、記述の誤りや疑問点が生じてきたので追記する。

1 わたしは空走感、というのを誤解していた。ネットで調べると<ドライバのブレーキ操作にかかわらずクルマが停まらないでそのまま前進する>ことを言うらしい。わたしは、ペダルを踏んでも、足裏に反作用がない状態が生ずる、と解した(あたかも、遊び部分を踏んだときのように)。しかし、足裏に抵抗感はそのまま残るようである(つまり、ブレーキが回生式(電気式)から機械系に代わったところで、足裏に圧力が掛かる仕組みは機械式=バネ仕掛けであることには代わりはない)。足裏に抵抗感がなくなるーー> 操作しても速度が落ちない(ブレーキがロックされている)と読み替えれば私のいいたいことは同じである。

2  引用記事への追加コメント。

(1) ある条件のもとでブレーキを操作した場合、ユーザーに空走感を抱かせる現象があることを4日、明らかにした。この現象が、安全に関わる問題なのか、それとも佐々木副社長がいう“フィーリング”なのかは、同社と国土交通省で調査中だが。。

空走感、と言っているがこれは感覚の問題ではなく、常務が述べているように、<物理的事実>の問題である。ここを誤魔かしてはならない。空走感覚、ではなく、空走現象を、意図的に発生させているのであり、これを発生させるのがABSの機能=目的なのだ。ブレーキが利かない状態を(ある状況における安全のため)意図的に作っているということ。事実として速度が落ちないのだからドライバが<空走>していると感じるのは当たり前のことである。そして、ブレーキを踏んでいるのに速度が落ちないのだからドライバが焦る(=パニック)のも当然だ

この現象が、安全に関わる問題なのか、それとも佐々木副社長がいう“フィーリング”なのかは。。

安全に関わる問題であり、かつ、感覚(フィーリング)の問題である。しかし、フィーリング、という言葉で誤魔化してはならない。事実として制動しないのだからそれをそのままドライバが<感じる>のは正常なことである。空走は事実であり、<空想>ではない。

 

(2)(常務説明)「一定の踏力で軽いブレーキングを続けた場合、路面の状況によっては、ブレーキの反応がわずかに遅れるという現象」。。

NHKの説明では、路面の状況にかかわらず、低速時では回生系ー>機械系(油圧計)に切り替わる、との説明であったが。(つまり、通常の路面でも、低速時で制動を掛ける場合には発生する)

事実はどうなのだろうか?

 

(3)(常務説明) ABSは車輪のロックを防止するために、ブレーキを一時的に緩めるという機能を持っている。この時(新型プ リウスは)回生ブレーキを油圧ブレーキに切り換わった時に時間差が生じる。そこでいろいろなお客様からご指摘をいただいているのが”空走感”。短時間ブ レーキが利かなくなることがある

「 。。切り替わったときに時間差が生じる。」 これは日本語になっていない。切替は瞬時には起こらず、制動がまったくかからない(回生系も、油圧計も動作しない)状態が発生する(その物理的時間はxxミリ秒である、位の説明は欲しい)と言えばいいのだ。上記のように、空走を発生させるのがABSの目的なのだ。

 

そこでいろいろなお客様からご指摘をいただいているのが”空走感”。短時間ブ レーキが利かなくなることがある。

ブレーキが利かない(という物理的事実)を「空走感」とはいわない。「空走」という。空走という事実を意図的にトヨタや発生させている(これは安全を考えてのことだ)、速度が落ちないのだから「空走感」がドライバに発生するのは当然である。想定内のこと。

。。とトヨタ常務は突っ張ればいいのである。そして、運転マニュアルに、

低速では制動方式が、回生系(電気系)から機械系に切り替わります。この切替には(コンマ)xx秒係り、この間、ブレーキは働きませんが、これは何の問題もありません(なぜ?)。制動を掛けたければ、ブレーキを踏みましてください。

。。と追記すればいい。なにをオタオタしているのだろうか?(1秒以内の空走ならば保安基準に違反していない、とも言っている)。

忖度するに、おそらく、この程度の空走時間なら、ドライバは検知せず、パニックにはならないだろう、と設計段階で考えた。が、あにはからん、空走を体感してパニックになるドライバがいた。だからつぎの問題がのこる。

1 一般ユーザ視点でABS搭載によるブレーキ試験を徹底的にやったのかどうか。

2 ユーザが気付かない程度の時間長の空走により、ABSの目的とする凍路の安全に効果があるのか?(空走、という望ましくない現象を発生させてまで)。

よかれ、と思って付加したABS機能の仕様検討&検査不十分ではないか、ということだ。常務の説明では、ABS導入による空走の発生は仕様通り=想定内、ということだ。つまりソフトのバグではない(一部の報道ではソフトウエアのミス、と伝えられている。このふたつは大違いである)。では、なぜ昨年末以降販売する車両のソフトを替えたのか?ABS仕様を変更したのか?


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滴水

うちの車はプリウスなんですぅ~(^^;)。
しかも去年の秋に納車されたばかり。その前も初代プリウスでした。
初代プリウスのユーザーはみんな知っていますが、ブレーキには独特の癖がありました。俗に「カックン・ブレーキ」と言います。
回生ブレーキとメカブレーキの連携をソフトでコントロールしているのですが、なかなか整序調整はデリケートだと思います。
メーカの品質保証部で定年を迎えましたから、想像するのですが、開発担当の技術者は「あれだ」と思い当たると、そこで思考停止することがあるのです。その意識がきのうの記者会見の「素人の方にも分かるように言うと・・・」というところに現れています。
しかし、現実に事故が起きていることを考えると、ブレーキコントロールのソフトチューニングが原因だと思い込むことには問題があります。・・・ソフトのバグかもしれませんしね。
システム屋さんの金言集には「ハードリッチにしなさい」という言葉があるはずですが、人間は新しく獲得した技術に過度に依存する傾向があります。
トヨタという自動車屋さんにとっては、メカ(ハード)に比べれば、ファームウェアは新しい技術でしょう。どうしても、目新しく、ハードチューニングに比べれば簡単(に見える)な技術に依存しがちになるのではないでしょうか。そういう場面で、原点に立ち返ることをきちんと主張できる技術者がいるかどうか、そういう愚直な技術者の声がきちんと聞こえるかどうか、・・・「さすがトヨタ」と言われるか、「やっぱりトヨタでも」ということになるか、興味深いですね。
オッと、うちはそんな傍観者みたいなことはいえないんだ、オーナーなんだから。

by 滴水 (2010-02-05 13:17) 

古井戸

>「素人の方にも分かるように言うと・・・」というところに。。

ここは聞き逃しましたが、随分失礼な物言いです。ドライバは運転のプロですよ。

電気系からメカ系への切替は現時点のエコカーでは(完全モーターカーではどうなのか?)もっとも神経を注ぐべき箇所でしょう。そんなことくらい高校生でも想像がつく。いったい、どの程度の時間を掛けて、とくに切り替え時点の試験をやったのか、ということです。あらゆる条件で。やっていなかった、ということを白状したようなものです。

ブレーキやアクセルがロックされて死亡事故という例が数十件米国で報道されている(米国のトヨタ車は該当の部品は米国で製造されているから、日本とは状況が違う)。あのアクセルをみるとぞっとしますね。フロアマットを敷くのさえ、わたしは気持ちが悪い。野球のボールやビー玉がコロコロ運転席の床をころがっている感じがする。

いまや洗濯機でさえCPU制御。うごかなくなっても手も足も出ない。クルマなんてソフトウエアの塊です。ドライバはソフト開発者にキンタマを握られています。

イテテ~。

by 古井戸 (2010-02-05 13:43) 

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