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恫喝と従属 沖縄基地問題 [Politics]

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雑誌『世界』12月号に松元剛(琉球新報)がコラムを書いている。

恫喝と従属 <鳩山政権は試合放棄か>

冒頭部分を引用する:


長く君臨した国内の前王者(自民党政権)に圧勝してコマを進めた国際シリーズにチーム(民主党)は臨んだ。前王者がこてんぱんにやられてきた流れを覆し、仕切り直すチャンスが訪れた。第一戦に相手国チームが繰り出した剛腕投手はうなりを上げる剛速球を投げ込んできた。鋭い眼光でにらみつけ、「まさか、打ち返すつもりじゃないだろうな」と威圧しながら。

「ファウルで粘って何とかする」と公言していた先頭打者は「かすりもしない」と怖じ気づき、打席を外してバットを置いてしまった。ベンチの監督は「気持ちはよく分かる」と理解を示しながら「(試合放棄するか、戦い続けるかどうか)最後は俺が判断する」と呟くしかなかった。相手ベンチは「胸元をちょっと厳しく突いただけなのに、奴らはまだまだ格下さ」とほくそ笑んでいる---。10月20日から21日にかけて来日したゲーツ米国防衛長官と向き合った日本政府の対応を野球の試合に置き換えるとこうなるだろうか。

焦点の米軍普天間飛行場の移設問題でゲーツ長官は、日米合意の名護市辺野古のキャンプ・シュワプ沿岸部への移設計画の履行が唯一の案であり、沖縄県が主張する沖合移動案は許容範囲。普天間移設がなければ海兵隊のグアム移転もなく、中南部の六基地返還、材沖海兵隊員の削減もない。計画はできるだけ早く進展させよ -- と迫った。新たな日本の民意を受けて誕生した新政権さえも属国扱いする「恫喝外交」そのものだ。

長官の帰国後、岡田克也外相は「県外移設は選択肢として考えられない」と述べ、民主党が主張してきた県外・国外移設をあっさり撤回した。県外移設に軸足を移し、辺野古移設案に加え、嘉手納基地への統合案を検討するという。米側の強硬姿勢の前にまともな交渉さえせずに引き下がる「従属外交」と言うしかない。鳩山由紀夫首相は「最後は自分が判断する」と述べ、なお県外を模索する姿勢を示してはいるが、外相発言を問題視していない。



松元剛の上記コラムは国民の大多数、とくに民主党に投票した国民の感じていることだろう。ところが、ニッポンのマスゴミや売国学者・評論家は米国の知性ゼロ・与太者国防長官のドーカツ発言に対し抗議するどころか<対米約束を守らぬ>と自国の政権を非難しているのであるから呆れる。 権力者=与太者に尻尾を振るのは日本のマスゴミの習性か。

プロ野球にたとえてみよう。相手と対戦する前に、監督やコーチは相手の戦力や当日投げる投手をいかに打ち崩すかをシーズン開始前、あるいはシーズン中は、試合前に検討しておくはずである。V9を果たしたジャイアンツの川上哲治監督が話していたが、監督はシーズン中対戦前の晩に翌日のゲームの予測をしていたという。相手チームの先発投手と先発メンバーを予測し、一回の表裏、二回の表裏、と9回までの攻防を頭に描いたのだそうである(その位でないと優勝監督にはなれまい。日本の政治屋にならなれるが)。もちろん、予測通りにゲームが展開することはあるまいがこういう<局前の検討、机上演習>をやって対応を事前に練っておくことは指揮官の必須作業であろう。民主党は対米外交交渉、とくに防衛問題で米国を<いかに攻略するか>について、過去、なにをやっていたのか?なにもやってこなかった、いかにパアプウリンな連中共であるか、がこのところの発言で明らかになってきている。とくに基地移設問題について「民主党のマニフェストに現行案が合致している」と詭弁を弄した北澤防衛大臣、大臣というより公職に就く資格のないいい加減な人間であることが判明した。こういうバカを任命した人間(鳩山?小澤?)もバカ、ということである。

日米安保条約・地位協定によりニッポンは米国に対し年間6000億円超の負担を強いられているが、このうち、2000億円超は自民党の金丸が<おもいやり予算>としてドロボウに追銭同然に投げ与えているものである。即刻、支払い停止してよい金である。民主党は政権を取る前から、地位協定は見直す、対米のおもいやり予算は停止する、現在これに向けて諸準備が進行中である、と平然と表明すべきであった。事前対応、初動対応がなっていない。 他国のいいなりになって国民の基本的人権、所有権、財産権を侵害されるまま放置してきた前政権の政策をすべて見直す、と鳩山は政権奪取直後に宣言すべきであった(オバマが来日したときにはこのように明言すべきである。これはオバマの政策と合致するはずであると言えばよい)。

戦勝国が敗戦国の領土を掠奪してよい、という規則は国際ルールのどこを探してもない。であるのに、1945年から72年の長きにわたり米国は沖縄を領土としたし、72年に返還後も沖縄と日本列島内の基地をそのまま使用し続けている。日本(国民)が日米安保・地位協定に文句を言わないのは(関心も示さない)、在日米軍基地の大半を沖縄(日本国土のわずか0.6%)に押し付け(在日米軍施設の75%が集中)、その結果として基地とそれにともなう問題を国民の大多数が無視していられるからである。つまり、倫理感覚、正義観念をスポイルされた<非国民・非人間たち>に支えられた米軍基地、という構造である。

わたしは72年、沖縄の日本への返還はあるべきだったのか?と疑う。沖縄は米国の領土として再出発した方がよかったのではあるまいか?すくなくとも偽りの政府・国民と一体となって空約束に苦しめられるよりは。あるいは、明治維新前、鹿児島藩に併合される前の、琉球王国にもどったほうがよいのではないか(独立宣言、である)?

米国のアジア問題専門家チャルマーズ・ジョンソンは沖縄をアジア最後の植民地と言っている(というよりは、ニッポンが米国の植民地なのである)。

ニッポンの戦後65年間は米国に従属の時代であった。積極的に従属することにより利権を得てきたのが自民党+官僚共であった。自民党政治の終焉を言いたいのなら米国支配をいかに脱却するかの道筋と戦略を用意することこそが最大野党の存在理由であったはずだ。宿題をナニもやっていなかった民主党。これは投票した国民に対するおおきな裏切りである。



11月4日の毎日新聞。我部政明(琉球大学)は基地移設先をグアムしかない、と述べている:

<普天間飛行場の移転先 グアムが海兵隊にも有益だ>
引用
。。。鳩山首相は最終的には自ら判断するとして、沖縄の人々に納得できる案を探ると言う。もしそうだとすれば、移設を検討する際の前提を変えることが不可欠だ。現状維持としてきた沖縄にある米海兵隊基地と一緒にして普天間飛行場を国外へ移設することである。先に述べた米海兵隊の特徴を生かすための効率的な運用が可能となる案だ。現状でも太平洋での米海兵隊は、沖縄、ハワイ、佐世保に分散配置され、その一体運用は不十分である。グアムには、これらを収容できる米海兵隊及び海軍基地の建設・整備計画が、ブッシュ前政権以来、進められている。

従来の前提を変えると、普天間の国外移転に加えて、基地負担の大幅緩和が実現し、米海兵隊の得意な一体的運用が効率よくできる新たな案が見えてくるのである。


また、10月17日毎日新聞<闘論>で佐藤学(沖縄国際大学)は、
<建設中止 米政府にも利益>として、次のように述べている。
「米軍再編で普天間移設は在沖海兵隊のグアム移転とパッケージになり、グアム移転協定が結ばれた。「政府間協定は動かせない」と日米官僚は言うが、オバマ政権はブッシュ政権時に結んだポーランド、チェコとのミサイル防衛(MD)に関する協定を見直した。米国自身が協定見直しをしたのだから、日本の新政権が協定の再交渉をするのは当然だ」

米国が日本基地を継続するのはニッポンが米軍に支給している施設とカネが大きな理由である。日本政府は米軍ひとりあたり年間2000万円近い税金をばらまいているのである。各国にある米軍基地と比べても一桁~フタ桁も多い額である。米兵の住宅、光熱費、遊興費、教育費までなぜ、政府が面倒を見る必要があるのか。お人好しのウスラバカ、というしかない。 すでに地位協定の住民に対する非人道的扱い(裁判権、捜査権なし)が問題となっているところ。自国民の基本的権利、生活権を奪っている在日米軍や日本政府が、他国に兵隊を派遣して支援する、支援せよ!など、ちゃんちゃらおかしいではないか。


村田晃嗣(同志社大)はおなじ毎日新聞<闘論>で次のように言う:
<信頼を失わぬため 実現急げ>

「米軍普天間飛行場の移設問題は、すべての当事者が満足することは望めない問題だ。96年以降、長い時間をかけて政府間合意に達し、在沖縄海兵隊のグアム移転と連動する。普天間の危険な状況を改善することは大変大事で、早急に実現すべきだ。海兵隊移転とセットというパッケージ理論では沖縄は納得できないといっても、交渉見直しで移設が遅れることは、沖縄にとっても受け入れられることなのか。

。。米国では2政権前、日本では7代前の政権の合意が実現していないのは、日本の信頼性にかかわる。2国間の問題での信頼関係の積み重ねが、核軍縮や気候変動問題など地球規模の問題での日本の影響力拡大につながる、というパッケージで考えるべきだ。13年も約束を実行できない日本が、温室効果ガス25%削減という大きな約束をしても、だれが信用するのか」

筆者名がなければ米国官僚の作文と勘違いされそうな内容である。こういう詭弁を弄するのがニッポンジンの大学教授というのだからオドロキである。売国教授と言ってよい。<信頼>はさまざまである。ドロボウから信頼されるのが重要か?村田の言う意味の<信頼>に倫理的な価値はまったく無い。ゼロである。法学部教授でなくても、信頼など<正義>にくらべればゴミ=無価値であるし、<正義>実現のために一時的に信頼を失ったとしてどれほどのものか、と問うべきである。一国の住民の基本的諸権利を侵すような政府間協定などは、政府が任意時点で破棄しても構わない、という国際間規則を創設あるいは慣例化すべきである。地位協定で規定されている<日米合同委員会>は安保条約にもとづく施設・区域を決定する協議機関であるがその決定内容は機密にされている。このような国民(詰まり国会)に対しても非公開を認める条約は無効とすべきである(米国議会は反憲法的と判断するはずである。そうなっていないのは決定内容が常に米国に有利だからであろう)。 ブッシュとその取り巻きからの<信頼>を得るため米国の腰巾着として動いたコイズミとニッポンが世界の嗤い物になっているのを忘れたか(腰巾着は、戦後一貫してそうだ。オバマには、おれたち、そろそろ腰巾着生活をやめたいよぅ、と言いなされ)。


「アメリカ軍はなぜいまも沖縄に駐留しているのだろうか?軍関係者にとって、その答は明白だ。旧ソ連の軍隊がなぜ東ドイツ駐留を楽しんだのと同じ理由から、アメリカ軍も沖縄駐留を楽しんでいるのである。自国の軍事植民地における生活は、ソ連の軍人にとってもアメリカの軍人にとっても、母国ではほとんど望めないほど素晴らしいものなのだ。 (略) 沖縄に駐留する現役勤務の軍人の全部が、賃貸料も光熱費も無料の基地内住宅を利用するか、地位と家族の人数に応じて月額900ドルから2000ドルという気前のいい住宅手当を受けている。このほかに生活費手当も支給され、その額は扶養家族一人の大尉または少佐の場合で月に700ドルほどである。それは決して厳しい訓練に明け暮れるだけの手当ではないのだ。

沖縄はいまでも本質的にペンタゴンの軍事的植民地であり、空軍と海兵隊はもちろんグリーンベレーや国防情報局にとっても、アメリカでは決してできないことを体験できる巨大な隠れ家なのだ。沖縄は、アメリカのパワーをアジア全体に浸透させ、この重要な地域でアメリカの覇権を維持し強化していくという。アメリカの掲げる壮大な戦略に利用されている。この戦略をひねりだしたことによって最大の恩恵を受けているのはアメリカ軍であり、戦略を実行しているのは軍の権力者たちだ。このことを彼らが世界(特にアジア)で秘かに行っている活動に目を向ければ明白になってくる。アメリカ軍の権力者はその活動を熟知しているが、その他のアメリカ政府関係者や国民はそれに気づいていないのである。」
チャルマーズジョンソン『アメリカ帝国への報復』 原題:Blowback(CIA用語。植民地や占領地の圧政に対して現地人から受ける報復という意味。2000年の著作であるが、9・11を予測したことでこの本は脚光を浴びた。9・11こそBlowbackなのである)。本書は2004年に改訂されたが9・11に関する序文を付しただけで内容は変わっていない。

前沖縄県知事・大田昌秀 「現実には安保についてもほとんど国民的議論もないまま、次々と仮想敵国がつくりだされて、声高に言い立てられるしまつです。そのあげく、みずからの生活領域には軍事基地を置こうとしないにもかかわらず、軍の駐留の必要性を説いたり有事立法の議論ばかりが先走りします」 (同書)

先日10/25のNHK日曜討論には岡本行夫と森本敏(この二人には共著がある)が登場して米軍基地の必要性を説いていた。大田昌秀が述べたように絶えず仮想敵国をつくるのに忙しい男達である。中国、北朝鮮を挙げている。中国には日米が多額の資金、資本を投入している。中国にいたっては米国債の第一の購入国である。日本は食糧の半分を中国に頼っている。軍事予算をドンドン増やしていますよ、と中国を危険、と番組で言い立てた岡本はイラクに大量の核兵器があると言いつのって多数のイラク人殺害をおこなった侵略を煽ったことをスッカリ忘れたようである。こういう恥知らずを討論番組に登場させたNHKにも笑ってしまった。人材不足なのか(他の登場者は田中均、寺島実郎)。

チャルマーズジョンソンChalmers Johnsonの最近作は、Nemesis: The Last Days of the American Republic, 2006。第6章で地位協定(SOFA: Status of Forces Agreement)を詳述している。
"How American Imperialism Actually Works: The SOFA in Japan"
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