SSブログ

「原爆投下はなぜ不正なのか?」  ロールズ、ウォルツァー論文を読む [戦争・原爆]

雑誌『世界』1996年2月号を図書館で借り、ロールズが雑誌『Dissent』(誌名は、反論というほどの意味か)に掲載した論文 Fifty Years After Hiroshima、をコピーして読んだ。Dissent誌は政治学者ウォルツァーらが主宰した左翼系雑誌。ロールズがこれに投稿するのはこの時が初めてであった。『世界』には、ウォルツァーの論文『核抑止論が無効である根拠』も載せている。ロールズ論文の長さは10頁前後と短いが、敗戦直前の日本側の事情もよく捉えているようだ。ここの論点には異議があるが、ロールズが強調しているのは、戦争を遂行した政治家や上位軍人と、兵士ではその責任に大きな差がある、ということ。政治家に高い識見と先見性とモラルを要求している。

220px-原子雲.jpgwiki 原爆

ロールズは冒頭の2頁(本論文の第一章)で、戦争における法=武力紛争法に関して六つの原理、想定を紹介している。論議の多い内容だろう。
1 【正しい戦争の目標】
まともな(decent)民主社会が当事者となる正しい戦争の目標は諸民衆の間 -- とりわけ目下の敵との間 -- に成立すべき正しくかつ永続的な平和である

2 【敵国の政情】
  まともな民主社会の戦争相手国は、民主的ではない国家である。このことは、民主的な民衆は相互に戦争を起こさないという事実から帰結する。

3 【戦争責任の軽重】
  戦争を遂行する上で、民主社会は三つの集団 (1)相手国の指導者と要職者、(2) 兵士たち (3) 非戦闘員である住民 -- を注意深く区別しなければならない。

4 【人権の尊重】
  まともな民主社会は、相手国の非戦闘員、兵士双方の人権を尊重しなければならない。これには二つの理由がある。諸民衆の法(the law of peoples = 国内法の枠を越えた普遍妥当性を有する「万民法」)に基づいてこそ、民間人・兵士ともにそうした人権を有しているから、というのが第一の理由。第二の理由は、こうした戦時においても人権が効力を有するという実例を自ら率先垂範することによって、敵国の兵士および戦闘員に人権の内実を教えるべきだということ。そうすることで、彼らは人権の意義を心底から悟ることになろう。

5 【戦争目的の公示】
  人権の中身を教えるという(4の)思想の延長として、この原理が成立する。すなわち、軍事行動と(交戦国や国際社会に対する)声明・布告との両面にいて正義を自負できる民衆は、自分たちが目標とする平和がどのようなものであるか、自分たちが求める国際関係はどのようなものなのかについて、戦争中においてあらかじめ示すべきである。この二点を明示することにより、民主的な民衆は自分たちの戦争目標の性質を示し、自分たちがどのような民衆であるかについても公然かつ公共的な仕方でもって提示する。戦争目標と国際関係のありようを示すべき義務の大半は民主的民衆の政府関係者・要職者の双肩にかかってくる。

6 【目的と手段の選択】
  実践的な目的=手段の推論が果たすべき役目についてとくに言及しておく。戦争目的を達成するための軍事行動や政策が適切かどうかを判定するための思考様式は、つねに上述の五原理の枠内で構成され、これらの原理によって厳格に限定されたものでなければならない。


ロールズの定めるこの基準はかれが戦後(ロールズは大学を卒業後兵役に付いた。兵士として終戦直後、日本に来たこともある。兵士の経験から厭戦家になったそうだ)、米国の戦争経験から学んだ知恵が大きく寄与しているに違いない。この基準を遡及的に過去の戦争に適用しているのだ。


先回りになるが、オバマや民主党(日米とも)がロールズの戦争基準をたたき台にして国連で認知された戦争基準の確立にむけ、国内外の反対を押し切って世界の民主勢力を説得、結集すればリンカーンに並ぶ英雄になるだろう。紛争を国際的に監視する常設の戦争裁判所の設立を望みたい。公共正義を論じる日本の政治学者もロールズの本論文をもとに戦争原則~平和的紛争処理の諸原理を論じ、パンフレットにして21世紀を生きる若い学生、生徒に配布すべきではないだろうか。年寄りに希望はない。

ロールズによる「原爆投下は不正」だった、とする判断はこの小論による根拠だけでははなはだ薄弱である。戦争の帰趨が見えている時点で日本への上陸・侵攻は不要だった、という。また投下を根拠付ける<危機的事態>も生じていない。さらに、トルーマンが「日本人はを野獣として扱う以外にない」と述べたことに対し、ナチスや東條に率いられた日本軍部についてならそう読んでいいかも知れないが、だが彼ら(指導者)はドイツの民衆、日本の民衆ではない、と。「感情を野放しにせず、平和を希求する民主的な民衆が歩むべき最善の進路を踏み外さないよう努めること、これが政治家たるものの義務なのである」

そして

「立憲民主制とその政体が尊重すべき権利・義務の基礎を正当化すること、これは(ただしい戦争についての論議と)同様に、公共的な政治文化の不可欠の要素であり、市民社会のさまざまな連合体の中で論じられるべき、公民教育の大切な一部分なのである。日々執りおこなわれるありきたりの政治の中では、そうした正当化の議論に耳をかす人が必ずいるかどうかわからない。けれども、これは特別の情況を例外として、政治の日常的主題に取り上げられることはなくても、政治文化の背景をなすものとして前提されていなければならない。そうした諸原理は根本的に重要なのだという把握が事前に十分ゆきわたっていなかったので、諸原理を国民の前で打ち出したとしても、たぶん実践的な目的=手段の推論の説得力を押さえつけることはできなかったろう。実践的な目的=手段の推論は、生存者・死傷者の人数の算定、戦争を終わらすための最短期間、その他の費用・便益の差引勘定といった観点からなされる。この実践的推論は、あまりに多くの事柄をあまりに安直に正当化してしまう。。。」

ロールズはこのような警告から、さらに、避けるべき二種類のニヒリズムを指摘する。

1 地獄のような戦争を一刻でも早く終わらせるためならどんな手段でも選んでもよいとする論法。

2 (戦争に突入した以上)私たちは皆有罪という同等の立場にあるのだから誰も他人(他国民)を非難できないとする主張。

この二つのニヒリズムに反撃するためにロールズの用いる弁明はあくまで正攻法である:

「これらのニヒリズムが空っぽであるのは次の事実から明白だ。すなわち、正義を重んずるまともな文明社会(その制度・法律、市民生活、背景となる文化や習俗)はすべて、どんな状況においても道徳的・政治的に有意味な区別を行っており、その区別に絶対的に依存している、という事実。。」

ニヒリズムに陥るのは惰性~本能によるが、それを回避するのは<教育あるいは宗教的信念?から得られる高い識見>に基づくしかない、とさえきこえる。こういうドンキホーテのように高邁な人物を公共正義の第一人者として抱えながら米国は戦後、大きな戦争をくり返したのだ。




ウォルツァーはイアンブルマを引用して、つぎのように述べている。
「。。広島での原爆によるコリアン犠牲者(約2万人)のうちかなりの部分が当地に(強制連行された)奴隷労働者であった。だが、日本側のどの文書や慰霊碑にも彼らの名前は触れられないままである。日本の指導者たちはコリアン政府に対して外交上の遺憾の意を表する前に、自分たちの歴史のそうした断片(=強制連行の事実とコリアン被爆者の存在)を明示し次世代に申し送るべきであることは間違いない。(合衆国に関していうと)私たち自身は、第二次大戦中に強制収容された日系(移民)家族に対して賠償金を払うという決定を下した。それはあまりに遅きに失したとはいえ、クリントン大統領がたとえ広島におもむいて何らかの(謝罪の)意思表示を行うことよりも、道徳の面からすればはるかに重要な決定だったのである」



8月3日の毎日新聞、一面トップに、エノラゲイ乗組員ジェプソン氏に対する毎日新聞の単独インタビュー記事が載っている。

引用:
エノラ・ゲイ乗組員:反核潮流の裏返し 「謝罪しないで」
 <世の中ナビ NEWS NAVIGATOR 国際>

 エノラ・ゲイ乗組員のモリス・ジェプソンさん(87)が毎日新聞のインタビューで主張したように、原爆は戦争終結のために必要だったと考える米国人は今なお多い。一方で、オバマ大統領が米国の指導者として初めて、原爆使用の「道義的責任」に言及したように、核兵器について問い直す機運が生まれているのも確かだ。ジェプソンさんの発言は、そうした動きへの当事者からの危機感の表れと考えることもできる。【ラスベガスで小倉孝保】

 プラハでのオバマ大統領による「道義的責任」発言は、原爆投下に直接関係した人にとっては看過できないものだったのだろう。ジェプソンさんは、この発言に関しては強い批判を繰り返した。また「当時を知らない世代になれば、原爆使用の罪が強調されるのでは」という危機感もあるはずだ。ジェプソンさんは「将来、米大統領が被爆地を訪問するとすれば」との質問に「謝罪するようなことになれば腹立たしい」と語った。
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20090803ddm002040112000c.html

エノラ・ゲイ乗組員:ジェプソンさんの発言(要旨)
http://mainichi.jp/select/world/news/20090803ddm007040080000c.html


ロールズの見解によれば兵士には原爆投下の責任はないのであり、その責任はトルーマンにあることになる。確かにその通りだろう。かりにエノラゲイの乗組員12人が全員、原爆投下を拒否した場合、軍規により罰せられるだろうが(命令拒否)、代わりの乗組員がいくらでもいたろうし、遅かれ早かれ投下はされたろう。

ロールズによると、日本の敗戦は明白な状況で、非戦闘員を大量に殺した、原爆や東京空襲は道徳的な悪行(great evils)となる。

しかし、そのように連合国の無差別爆撃(英国によるドレスデン無差別爆撃など)を裁くのであれば、日本軍による無差別爆撃やアジアでの戦争犯罪も裁かねばならなくなるのは当然である。

エノラゲイ乗組員ジェプソン氏は、当時は米軍の本土上陸作戦が近づいたと説明、「上陸すれば、米兵だけでなく、日本兵や一般の日本人の多くが犠牲になることは明白だった。原爆は戦争を早期に終結し犠牲を回避するための唯一の選択だった」と述べた。


<唯一の選択>かどうかはなんともいえないが、有効な選択であったことは間違いなかろう。しかし、米兵(味方の兵隊)だけの命を救うのが戦争というものなのか?そうであれば、いかなる戦争であっても冒頭から大量破壊兵器を使用するのがもっとも有効、優秀な作戦ということになる。非戦闘員に対する無差別爆撃は許されぬ、という戦争ゲームの規則からは逸脱していることは間違いない。世界で最初に無差別爆撃をやり始めた日本、実際面で何十万という一般市民の犠牲者を出した英国や米国の空襲は断じて許されない。しかし、これを追求できるのは誰であるか?アジアの各地で現地の一般人に対して悪行を展開し、そのすべてを調査し、明らかにした上で謝罪するニッポン人のみが連合軍に対しても犯罪を追求できる。


ロールズは原爆投下の第3の理由として
「。。(「日本本土の迅速かつ完全なる壊滅」を警告したポツダム宣言どおりに)原爆が投下されたことで、天皇と日本の指導者たちは面目を保ちながら(無条件降伏を受託するための)退路を手に入れることができた。日本のサムライ文化を念頭において考えるなら、これはけっこう重要な理由となる。。。。そして、8月12日に天皇自ら降伏を命じる。米軍最高司令官の指示に服すべきことがもし了解されるなら、天皇は退位しなくてもよいとの約束を米政府から取り付けた後のことである」

と、述べている。天皇がサムライであれば腹を切ったろう。我が命欲しさだけしか天皇の頭にはなかった。しかも、天皇は原爆投下をずいぶん前から承知しており、これを利用しようと考えていたのである。玉音放送の内容を読めばアキラかだろう。かりに、原爆投下がなかったらどうなるか?日本軍は容易に降伏せず、本土決戦になり、多数の兵士、一般人の命が失われたろう(戦闘によるより、市民の餓死が多いはず。兵士はたらふく食ったろう。45年終戦後の1年間にも本土で何十万の市民が餓死したのだから)。その後最終的に日米軍に多数の死者が出た後、戦後処理で天皇の命はどうなったか?天皇はこれを比較したのである。原爆投下が既定路線とわかった時点で、投下直前に、降伏宣言をするということは我が命欲しさだけの天皇にはあり得ない選択だった。原爆によってなにもかも有耶無耶にしたかった。

同じことが広島市民にも言えるのではないか。原爆が広島に投下されなかったとしよう。広島市民は、戦争について、何か発言したろうか?アジアでの無辜の犠牲者のために現地を訪れたろうか?何も語らず何も思念せず何もせず、であったろう。 今でもそうであるように。

原爆は米兵士や日本軍、日本の市民の多くの命を救った、というのはかなり確度の高い事実である、と私は想定する。しかし、戦争というゲームは数十万の一般市民に対する一発の大量破壊兵器で終わらせるべきものではない。双方の兵士に多数の死者を出し、国土と国民の資産に壊滅的な打撃を与えるべきものなのである(注。原爆投下の当日、広島市からは日本軍兵士のほとんどは消えていた、という)。こうでもしなければ双方の馬鹿な指導者たちに戦争の恐ろしさ、無益さを学ばせることはできなかった。そういう意味で、原爆は少なくとも失敗だった、といえるだろう。

何度も言うがアジアの民衆が日本帝国軍人から受けた被害に比べれば原爆の苦しみなど屁のようなものである。アジアとくに南洋で1944~45年にかけて多数の兵士が、病死、餓死した。現地人も多数日本兵に殺され、食糧財産を徴集された。食糧も兵器もなく辺鄙な島々に送り込まれた兵士も気の毒だが兵士の死と、現地の一般人の死を同列には論じられない。

大東亜戦争=アジア太平洋戦争を、日本への原爆投下と無差別大空襲だけで代表させることができれば天皇や元軍人にとっては幸いであるがそういうわけにはいかない。


オバマが広島に来て<謝罪>するのであれば、それは米国が広島市民やニッポンに謝罪するのであってはならない。人類の名において、戦争(原爆のみでなく)犠牲者を追悼するのでなければならない(ベトナム、イラク、アフガン。。の一般市民もその中には入る)。原爆慰霊碑の碑文「過ちは二度とくり返しません」はたんに原爆の惨禍を悔いているのではなくすべての戦争を止めよう、という全地球の人類を代表した声とせねばならない。オバマが頭を垂れるとき、ニッポンや広島の市民はオバマよりさらに深く、頭を垂れなければならないだろう。



慰霊碑090803_1136~01.JPG


ロールズのこの論文はネットでは読めないようだ。
かれの論文集に収録されている。いずれ購入してこの論文だけは読んでおきたい。『世界』への論文翻訳者は川本隆史。
「Collected Papers」http://www.amazon.com/Collected-Papers-John-Rawls/dp/0674005694/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1249263111&sr=1-1

論理学者=三浦俊彦が去年、原爆投下を<クリティカルシンキング>した本を出版している。
『戦争論理学  あの原爆投下を考える62問』(二見書房)
すくなくともロールズよりは遥かに多面的に原爆を捉えている。深く、かどうかが問題。
三浦は事実認定からしてロールズと意見を異にする点が多々ある。三浦の結論から、<謝罪>に関して言えば、
「日本の多数派の考えは、トルーマンの原爆投下決定は間違っており、大統領から原爆投下機搭乗員にいたるまで被爆者に謝罪すべきだ、というものだろう。本書の結論は、むしろ被爆者に謝罪すべきなのはアメリカ人ではなくて日本政府、天皇、かつての軍首脳関係者などである」というもの。至極妥当な結論であるとわたしはおもう。天皇、政府、軍が市民に謝罪したことがかつてあるか?市民が謝罪を求めたことがあったろうか?しかし、この<謝罪>は天皇、政府、軍が行わなければならない日本兵士に対する謝罪、さらに、アジア各国の民衆~市民に対する謝罪の大きさに比べれば物の数にも入らないであろう。日本兵士はさらにアジア各国でおこなった行為を振り返り謝罪に相当するものがあるのではないか、自問自答する必要があったろう。日本在住の市民(広島市民を含め)についても同様である。謝罪の義務は他の何物によっても帳消しになることはない。

               7624757.jpg


nice!(1)  コメント(15)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 15

そりゃないよ獣医さん

下記のボストンコムのサイトに多くのアメリカ国民が書いています。
その多くは、日本の非人道的な戦争を非難しています。
私も、あの戦争はミッドウェイの敗戦で終結すべきだったと考えています。
戦陣訓などを掲げ、散華を強要した特に陸軍の本土決戦などが、彼らの主張に根拠を与えているように思います。
http://www.boston.com/bigpicture/2009/08/hiroshima_64_years_ago.html
by そりゃないよ獣医さん (2009-08-07 09:11) 

古井戸

20年7月時点で日本は壊滅状態だった、とロールズなどは言っているがそんなことはないですね。かりに原爆が開発されていなかった場合、米軍による本土上陸作戦が決行されたでしょう。すると、すでに制空権を失っていたニッポンの、あらゆる都市は焼夷弾攻撃を受け、国内の工場や軍需施設、輸送路は破壊、分断される。20年の冬を越すことになれば間違いなく餓死者、病死者は数百万人に及んだでしょう。北朝鮮状況です。

これでも日本軍が抗戦すれば米軍の死者は数万は出たかも知れない。しかし半年も抗戦は継続せず敗戦になる。

軍部、天皇に対する日本国民の感情が悪化、天皇はヒトラーと同じように自死、あるいは裁判でも極刑になったでしょう。原爆は天皇の意図通り、天佑となった。
by 古井戸 (2009-08-07 14:49) 

ルミちゃん

当時、戦場が日本本土だけならば、ほっておいても、日本は自滅するだけなので、原爆投下は非難される行為だと思います.(アメリカ軍は無理に上陸する必要はない)

けれども、満州を除く中国には、蒋介石軍を上回る兵力が展開していました.(120万だったと思う).戦争が長引けば、中国だけでも、原爆の被害者を上回る、被害者がでたと思います.

ポツダム宣言を、受諾する意思表示さえしていれば、戦争を止める意思表示があれば、原爆投下を非難できるのですが、それはありませんでした.

by ルミちゃん (2009-08-13 16:10) 

古井戸

>当時、戦場が日本本土だけならば、ほっておいても、日本は自滅するだけなので、原爆投下は非難される行為だと思います.

前半は事実でしょう。しかし、それと後半(原爆投下せずにおいてくれ!)は、直結しません。

1 すでに書いたように、原爆を前提としない米軍の上陸計画はありましたが、それは冬を越して春に関東上陸というもの。その間、制空権のないニッポンに沖縄並みの空襲がくり返される。ただでさえ食糧のない日本は冬を越える体力はない。一千万人近い国民が春までに死ぬでしょう。現在の北朝鮮のような国です。馬鹿は死ななきゃ治らない。馬鹿な指導者を得た国民も死ななきゃ事は終わらない、ということでしょう。

2 天皇と日本軍はそれを認めないでしょう。日本人が人っ子一人残らず餓死するなら別として、残りの国民から戦後、軍部や天皇は糾弾され、戦犯として天皇は極刑になります。

原爆は、日本人~国民の道徳的罪を減じ、天皇と軍部の政治犯罪、刑事犯罪を大幅に減じた。原爆は天佑であった、ということです(米軍にもそれなりの功罪はあった、がそれはニッポンジンが云々することではない)


>ポツダム宣言を、受諾する意思表示さえしていれば、戦争を止める意思表示があれば、。。

P宣言を<黙殺>していた政府も、原爆投下後、はじめて、中立国スイスを介して、ポツダム宣言受託の意思表示をした(10日前後)。しかし、天皇の命を取らないでくれぃ、という交渉に手間取り、15日までずれ込んだ。この間、無差別爆撃は続けられ何万という命が失われた。
小田実が<難死>と呼ぶ状況が生じた。
http://www1.doshisha.ac.jp/~kasano/FEATURES/2006/report-oda.html

by 古井戸 (2009-08-13 16:52) 

ルミちゃん

>1 すでに書いたように、原爆を前提としない米軍の上陸計画はありましたが、それは冬を越して春に関東上陸というもの。その間、制空権のないニッポンに沖縄並みの空襲がくり返される。

沖縄戦が敗戦に終わり、日本は国体護持を条件として、ソ連に対して終戦工作を行っていました.
ある人が、こう書いていました.
原爆がなくても、アメリカの日本上陸がなくても、アメリカが、国体護持、天皇の命の保証をすれば、日本は降伏を受け入れたはずである.
原爆の完成が近いことを知ったトルーマンは、ポツダム宣言から、国体護持に関する条文を削除してしまった.
by ルミちゃん (2009-08-16 17:26) 

ルミちゃん

鳥居民と言う人が、太平洋戦争に対する、アメリカの戦争目的について書かれていました.
が、日本の戦争目的については書かれていなかったので、私なりに書いてみようと思います.

太平洋戦争開始時
1.石油をはじめとする、物資の調達.(東南アジアの占領)
2.ビルマよりの援蒋ルートの遮断.(ビルマ占領)
3.イギリスがドイツに降伏したとき、インド、オーストラリアの権益を、ドイツより得る.
インドを攻めるか、オーストラリアを攻めるか、海軍の主張を入れて、オーストラリアを攻めることになりました.
陸軍には、オーストラリアを占領する兵力がないので、東条英機は怒りました.
天皇の独白録には、結果としてオーストラリアを攻めて失敗したので、インドを攻めればよかったと書かれています.
戦局の悪化により、戦争目的が国体護持になって行きました.
------------------------------------------
では、アメリカの太平洋戦争の戦争目的はなんなのか.
古井戸さんに、ぜひ、お聞きしたいのです.
by ルミちゃん (2009-08-17 15:10) 

古井戸

>原爆がなくても、アメリカの日本上陸がなくても、アメリカが、国体護持、天皇の命の保証をすれば、日本は降伏を受け入れたはずである.
原爆の完成が近いことを知ったトルーマンは、ポツダム宣言から、国体護持に関する条文を削除してしまった.

日本は降伏を受け入れた。ここでいう日本に日本国民は入っていない。天皇や軍部のことです。天皇や軍部が生き残ったら困るのですよ。日本国民は。米国にとっては困らない。従属させれば。

つまり、曲がりなりに生き残った天皇と、ほとんど生き残った軍部(自衛隊に横滑り)は、戦後米国と組むことになり、ニッポンは植民地国になった、というわけです。

>原爆の完成が近いことを知ったトルーマンは、ポツダム宣言から、国体護持に関する条文を削除してしまった.

しかし、結局天皇を生き残らせた。

10日にポツダム宣言を受け入れたが、宮廷側(政府)が国体護持にこだわって、大阪など大都市の空爆を14日までくり返し多数の死者を出し、資産を失わせた。
それだけのことをやるなら、米国も天皇を生かさず、徹底破壊すべきだったのですよ。戦争裁判も東京裁判方式でなく米軍単独管理のイラク方式。天皇と軍人をジャカスカ死刑にすればよかった。国体でなく、国民のためには。

by 古井戸 (2009-08-19 02:15) 

古井戸

ロールズの議論に抜けているのは、歴史的観点です。

英米(あるいは仏)は、近代国家とくに民主制を敷くためには多くの国民(貴族をふくむ)の命を失った@革命。ニッポンは幕末~西南戦争で多少の血は流れたがもともと民主革命ではなく、下級武士の反乱であったため、明治以後、いつかの時点で、天皇制から完全民主制に移行するためには相当の国民の血が流れなければならなかった、ということになるのでしょう。英米仏のように内戦ではなく、対外戦(対連合軍)という形を取った。国民的視点からは、内戦あるいは革命であろうと対外戦争であろうとどっちでもいい。ただ、国民意識が一向に改まらないのがタマに傷。
by 古井戸 (2009-08-19 02:33) 

古井戸

>日本の戦争目的

書かれていることでイイのじゃないでしょうか?
ひと言で言えば、中国アジアにおける利権保持です。

(しかし、対米戦争は海軍内部でも反対は多かった、
最近のNHKスペシャルをご覧になりましたか?軍令部も勝てる見込みのないのに開戦した。国家の利益ではなく、省益、です。現在と同じことをやっている)

>アメリカの太平洋戦争の戦争目的はなんなのか
>鳥居民と言う人が、太平洋戦争に対する、アメリカの戦争目的について書かれていました.

鳥居はなんと言っているのでしょうか?

誰が考えてもアジアにおける利権の対立でしょう。それに、ドイツと組んだニッポンを叩くのは英米の目的です。英米はまだ太平洋では組んでいなかったが、真珠湾で英米を敵にすることになり、チャーチルは歓喜した。渡りに船、とはこのこと。

盆休みに映画『硫黄島からの手紙』をTVで観ました。詰まらぬ映画だった。玉砕映画。

<日本海軍 400時間の証言 NHKスペシャル>これをまとめてドキュメント映画にすればそこそこの劇場作品ができあがる。ニッポンが(今と同じ)いかに無責任天皇制官僚国家であったか。

いったい戦争とは何のためにするのか?

アジア太平洋戦争は勝てぬ戦いだった。引き際を誤った。石橋湛山らが言ったように中国からは引くべきだったのです。

しかし、日本国民のことを考えると、湛山らの進言を受けると小国であっても天皇制軍事国家がそのまま生きのこり不味いことになる。真珠湾攻撃をヤッテ大正解。英米にはポツダム宣言などをつきつけず、徹底的に天皇や軍部、基地を攻撃して壊滅して欲しかったね。

原爆を落とすのなら皇居の真上、および、参謀本部&市ヶ谷、に落として。京都を壊滅して欲しかった。

by 古井戸 (2009-08-19 02:44) 

ルミちゃん

1937年8月15日、近衛文麿の暴支膺懲演説、および海軍の渡洋爆撃による南京空爆、この二つを合わせて、(蒋介石に対して)言うことを聞かなければ、たたき殺してやる、が、日中戦争の日本の戦争目的であった、と考えます.
日本は、軍事目標だけでなく、中国の大学生が抗日を叫んでいるので、図書館を爆撃(銃撃)していた.
------------------------------------------
アメリカの太平洋戦争の戦争目的
アメリカの太平洋戦争に対する戦争目的は、ハルノートに示されています.アメリカは日本に対して、中国よりの撤兵を要求しました.それに対して、東条英機は中国からの撤兵を拒否したため、太平洋戦争になりました.つまり、日本が撤兵を受け入れれば、太平洋戦争は無かったわけで、アメリカの戦争目的は日本ではなく、中国にあったと言えます.アメリカは、日本軍を中国から撤兵させるために、戦争を行ったのであり、日本を占領することを目的に戦争を行ったのではありません.

日中戦争で日本軍に痛めつけられた蒋介石は、一面識もなかったチャーチルに電報を送り、援助を要請したと言われています.
以下、私の推測です.
国共合作は名ばかりで、日本との戦いで蒋介石の軍隊は消耗して行くのに、毛沢東の軍隊は勢力を増していった.このままでは日本との戦いだけでなく、毛沢東にも負けてしまうと、蒋介石は窮状をチャーチルに訴えたのだと思います.そして、チャーチルはルーズベルトに、蒋介石に対する援助を要請しました.
その結果、ルーズベルトは日本に対する態度を硬化させ、ハルノートによって、日本軍の中国よりの撤兵を要求しました.
日本との戦いを続けるほど、蒋介石は弱体化してしまうので、ルーズベルトは太平洋戦争の早期終結、日本を降伏させることを急ぎました.そのために、スターリンに日本と戦争をするよう促して、日本の北海道と、朝鮮の半分を、スターリンに与える密約を結びました.
ルーズベルトはカイロ会談の後、テヘランへ行き、もう一度カイロに戻ったときに、蒋介石は弱体化していて、戦争が終われば、毛沢東に負けるのは確実だと言う報告を聞いたと言われています.

以下、私の推測です.
トルーマンもルーズベルトの戦争目的を、引き継いだと思います.蒋介石の劣勢はどうにもならないものであった.トルーマンは、わずかな望みを原爆投下にかけた.ひょっとしたら、原爆投下により、毛沢東が、スターリンが、おじけづくのではないか.毛沢東を打ち負かすのは無理でも、蒋介石と毛沢東が中国を半分づつ分け合った形で、終わらせることはできないか、と、考えたのではないか.
よく言われるように、原爆が完成したので、落としてみたかった、だけなのかもしれません.議論する気はありません.
by ルミちゃん (2009-08-19 18:41) 

古井戸

>日本が撤兵を受け入れれば、太平洋戦争は無かったわけで、アメリカの戦争目的は日本ではなく、中国にあったと言えます.アメリカは、日本軍を中国から撤兵させるために、戦争を行ったのであり、日本を占領することを目的に戦争を行ったのではありません.

つまり中国・満州利権、ということです。日本と満州鉄道を共同管理しようと米国は提案していた。日本の領土を侵略する気はなかった。。当然です。

>その結果、ルーズベルトは日本に対する態度を硬化させ、ハルノートによって、日本軍の中国よりの撤兵を要求しました.

英米とも蒋介石の要請、というより、狙いは中国利権です。単なる支援、なんてあり得ません。国民党と共産党のドッチが勝つか?勝つ方の後押しをしよう。。どの国も当然そう考えます。

>トルーマンは、わずかな望みを原爆投下にかけた.ひょっとしたら、原爆投下により、毛沢東が、スターリンが、おじけづくのではないか.

ソ連とは冷戦に入っていましたから原爆はソ連侵攻(日本の分割)から米国の単独支配(対ニッポン)を守るために投下された。。これは米国からみれば理由のあることです。ソ連はスパイにより米国の原爆開発の状況はずいぶん前から知っていました(ソ連が知っていることをトルーマンは知っていなかった)。ソ連もタッチの差で原爆、水爆を製造します。

日本が米ソで分割=ベトナム化(南北)あるいはドイツ化(東西)されなかったことは、いいことか?は議論があってよいですね。米国単独の、地球最後の植民地状況になっているニッポンの現在をみれば。

by 古井戸 (2009-08-19 19:41) 

ルミちゃん

>誰が考えてもアジアにおける利権の対立でしょう。
日本も反共産主義を叫んでいました.この点ではアメリカも同じであり、毛沢東に中国を支配されては困るのは、日本も、アメリカも同じだった.それが分からなかった日本は、どうしようもないバカだったのです.

アメリカが戦争を決意した理由では、対立はしていません.
別に、アメリカがいいとか、共産主義が悪いとか、言いたいのではありません.反共産主義を叫びながら、その反対の事をやっていたのが、おかしいのです.
----------------------
第二次国共合作により、日本と蒋介石を戦わせて、日本と蒋介石の両方を弱体化させるのは、スターリンの作戦でした.第二次上海事変が始まると、中ソ中立条約を結び、スターリンは蒋介石を軍事的に援助しました(密約).更にソ連は日本とも中立条約を結んで、日本がソ連を気にすることなく、米英および蒋介石と戦争ができるようにしました.

by ルミちゃん (2009-08-19 20:21) 

ルミちゃん

余談ですが
>原爆を落とすのなら皇居の真上、および、参謀本部&市ヶ谷、に落として。京都を壊滅して欲しかった。

私も、そう思います.でも、その考えは、あまりにも虫が良すぎると言わなければなりません.

イタリアでは、レジスタンスがムッソリーニを倒しました.(その後、ドイツに占領された)
フランスでは.
ジャン・ルノワールが、映画『ラ・マルセイエーズ』の終わりで、こう言っています.
「革命は、貴族が(金持ちが)始めたが、俺達、貧乏人が終わらせるのだ」

イギリスのマグナカルタに始まる革命は、王様が貴族に税金をかけたところ、怒った貴族が、王様の権力を少しづつ奪い取る形で始まりました.

フランス革命は、ルイ16世がアメリカの独立戦争を援助し、その結果、お金に困って貴族に税金をかけたところ、貴族が叛乱を起こして始まりました.

日本の明治維新は、殿様(貴族、武士)が、王様(徳川家)に、叛乱を起して始まりました.フランスでは幾多の犠牲を払って、庶民が革命を終わらせたのですが、では、日本の場合はと言うと、庶民が自分たちの力で行ったものはありません.
大正時代の末期、普通選挙法までは行き着いたのですが、その後は、誰かがめちゃくちゃにしたので、その続きを、日本国民の手で行う必要があると思います.

GHQの占領政策で、財閥解体、農地改革、教育改革が行われました.どれ一つとっても、容易に実現できることではありません.これ以上に、アメリカに望むのは、独立を望む国の人間の言うことでは無いと思います.

by ルミちゃん (2009-08-19 20:25) 

古井戸

>反共産主義を叫びながら、その反対の事をやっていたのが、おかしいのです.

あとから考えて、この程度のおかしさは歴史上ではザラです。
社会主義国=ソ連が連合国の一員だったんですよ。こっちの方がよっぽどおかしく見える。ファシズム~ドイツを倒したのはソ連の力です。プラグマチックでゆかねば。米国が反共に走ったのはかなり後のことです。

>私も、そう思います.でも、その考えは、あまりにも虫が良すぎると言わなければなりません.

米国は自国の戦後戦略を見すえてやらなかった(天皇と、軍人~官僚を利用した戦後支配)、それだけのことです。

虫がよすぎる、のを恐れてはなりませんよ。シロネコでも黒猫でも使える物は利用しましょう。

>GHQの占領政策で、財閥解体、農地改革、教育改革が行われました.どれ一つとっても、容易に実現できることではありません.これ以上に、アメリカに望むのは、独立を望む国の人間の言うことでは無いと思います.

くり返すとおり、GHQがニッポンを民主化したのはそのほうが自国にとっても都合がいいからです(現在の北朝鮮政策とおなじ)。 米国にとって都合のいい、ニッポン植民地化(基地列島)はいまだに継続しています。
by 古井戸 (2009-08-20 08:36) 

ルミちゃん

イギリス、アメリカは、『敵の敵は友』と言う考えで、アメリカはソ連を軍事的に援助しました.(ルーズベルトは援助しすぎました)
イギリス、アメリカ、ソ連にとって、ドイツは共通の敵であった.
------------------------
日本と蒋介石の場合は、どうなのか.


by ルミちゃん (2009-08-20 19:32) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。