SSブログ

餓死列島 [Ethics]

2007年10月11日NHKのクローズアップ現代は、 『日本で餓死が起こっている』を放映した。

曰く:

今、全国で餓死する人が後を絶ちません。その数、年間五十件以上。最後の頼みの綱の生活保護も十分に機能していません。相次ぐ餓死の真相と解決への取り組みに迫ります。

番組で取り上げたのは 北九州市の事例である。

50歳代の男性が日記に、米の飯を食いたい、と書き残して餓死した。 生活保護を辞退した、と。 辞退? 市側の拒否じゃないのか?

いやいや、辞退なんです。 生活保護を求める市民のうち、働ける年齢(65歳まで)範囲であれば、医者の健康診断を受けさせる。すると、         

                           <軽労働なら可能> 。。

という診断をされる。さ、働きなさい、ハローワークに行きなさい!と、生活保護受給を辞退させられる。 身体が労働可能、ということは則ち職業がみつかる、ということではないのである。福祉課の職員にはわからんだろうが。

 北九州市は、これを <生活保護拒否、水際作戦>としてマニュアル化した。全国でも、生活保護打ち切り模範都市となり、国は北九州方式を全国に喧伝したらしい。

 

 『北九州市餓死事件に関する声明』 を全文引用する:

反貧困ネットワーク準備会(代表:弁護士 宇都宮健児) 連絡先:湯浅誠(事務局長) antipovertycampaign2007@yahoo.co.jp  

これはもう「殺人」ではないだろうか?  すでに報道されている通り、亡くなった52歳男性は、生活保護を受けていた。そして、生きていける見込みのないまま、放り出されて(廃止されて)いた。  北九州市は、「辞退届が出たから廃止した」と言っている。それは、誰も見えないところでこっそり、とにかく本人に辞退届を書かせてしまえば、行政の責任はすべて免責されるものと思い込んでいるかのようである。

人々をさんざん追い返しておきながら、「申請する意思がなかったから開始しなかった」と開き直る北九州市が、まさに言いそうなことではある。  北九州市は、去年の広島高裁判決を「知らなかった」、「聞いていなかった」と言っている。それは、教えなかった厚生労働省が悪いと言っているかのようだ。では北九州市は、相談者が生活保護に関する知識を持たないとき、「誰でも、いつでも、申請できるんですよ」と教えてきたか? 教えてこなかった。  すべて、自分の都合のいいように言っているだけだ。すべて、自分だけが許されるように、自分の責任だけ問われないように、取り繕っているだけだ。  北九州市は、外形上の辻褄合わせにしか関心がないのか? 北九州市職員には、恥を感じる神経がないのか? あなたたちは本当は、受給者の死ぬことこそ「モデルケース」だと思っているのではないのか?  辞めると本人が言ったから、死んでもそれは本人の責任だ(行政の責任はない)と言うのは、「過労死も自己管理の問題」と言ったどこかの社長と変わりない。いったい何人死ねば、北九州市は自らの手法を改めるのか?  

今回の事件に関して、私たちは次のことを求めたい。

1) 北橋市長以下、すべての福祉部局職員は、亡くなった男性宅に赴き、追悼すべきだ。「モデルケース」、「市は関係ない」、「対応は適切だった」発言をした職員は、謝罪せよ。

2) 北九州市では、いったい何人の「餓死」「変死」「孤独死」があるのか。すべて公表せよ。そして、行政との関わりがあった事例については、すべて検証委員会で検討せよ。たまたま明るみに出た今回の事件だけが「問題」のすべてだとは到底思えない。

3) 市内すべての面談室に、職員の言動を監視するためのビデオを設置せよ。もはや私たちは、北九州市の現行職員たちの「自浄作用」を期待できない。間違っても「相談者のプライバシー保護の観点からできない」などという、今さらのタテマエを持ち出すな。

4) 北橋市長および福祉部局幹部は、今後「申請の意思のある人には、無条件で申請書を渡す。福祉事務所のほうからは辞退届の提出は求めない。辞退届の様式は破棄する」ことを宣言・公表せよ。 *私たち「反貧困ネットワーク準備会」は、それぞれの分野から貧困の問題に取組む市民団体・労働組合・法律家・学者諸個人の集まりです。

反貧困ネットワーク準備会代表 宇都宮健児(弁護士) ##

 

『賃金と社会保障』 特集・餓死事件と北九州市生活保護行政、から: http://list.jca.apc.org/public/aml/2007-March/012286.html

引用:

。。「“極北”の地、北九州市保護行政が示す“福祉の未来”―北 九州市から全国が見える」の書き出しをご紹介して終わりましょう。     

 「あんたのせいで面談できないんだよ!」――〇六年一〇月二四日、私は北九州市 小倉北区福祉事務所の面接室で、面接主査のA氏にそう叱責されていた。

A氏によれ ば、私が面接室にいるから相談を始められない、らしい。相談者本人である二人の女 性は「同席をお願いしたい」と目の前で言明しているし、私も「第三者の同席を原則 として認めないのは相談者のプライバシー保護が目的なんだから、本人から同席の要 請があれば問題ないでしょう?」と話してみるが、まったく取り合わない。とにかく 事情がどうであれ、私がいるかぎり相談を始めない、第三者の同席と相談は両立でき ない、相容れないもの、と真剣に考えているようだった。

 しかし私は、実は同福祉事務所での、その前の相談には同席していた。別の申請者 に同行して面接室に入室した際、対応した別の面接相談員は「あなたは?」と誰何し たものの、私が本人の要請にもとづいて同席したことを話すとそのまま相談を始め、 相談および生活保護申請行為は、何の問題もなく終了していた。なぜ、このAという 面接主査は、こうも目くじらを立てるのだろうか・・・?  おとなしく退席しない私にさらに怒ったA氏は、面接室を出て行ったかと思うと、 課長を連れて戻ってきた。小倉北区保護第二課長B氏だ。彼が最初に持ち出したのは 「決着済みだろ」という理由だった。すでに午前中、同席を認めるかどうかで「北九 州市生活保護問題全国調査団」(以下、調査団)のメンバーと交渉を済ませており、 弁護士も含め同席しないことで”合意”しているはずだ、ということらしい。

しか し、生活保護の相談は、個々の事案に即し、個々の相談者の意思にもとづいて行われ るはずだ。事案の内容にかかわらず第三者同席を行わないことの包括同意などありえ ない。「だいたい私は課長さんとそんな合意はしてませんよ。今朝東京を発って、 さっきこっちに着いたばかりなんだから・・・」。  次に「施設管理権上、同席は認めない」というかなり奇妙な理屈を持ち出したB氏 は、実際に警備員を呼び寄せた。また、騒ぎが大きくなったために様子見に来た市議 会議員に「先生、この人を出させてくださいよ。第三者がいると面接相談員がリラッ クスできないんですよ」と訴えた。これも、私がいまだかつて聞いたことのない突飛 な理由である。面接相談員のリラックスのために同席を遠慮する?

 「この人、本気 で言っているのか?」

 

# 申請拒否 水際作戦 これが実態

 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-08-27/2007082701_01_0.html

録音テープ公表  

集会では生活保護申請者を福祉事務所窓口で追い返す「水際作戦」の実態が申請者とのやりとりを録音したテープによって明らかにされました。  場所は大阪の福祉事務所。

申請者夫妻は、夫が網膜剥離(はくり)、白内障、妻がうつ状態にあり、無職・無収入。食事は友人の差し入れに頼っていました。  家賃が十一万円(滞納している)で住宅扶助基準(大阪は上限五万四千円)を超えるので生活保護の適用はできないと申請さえさせませんでした。  二回目の申請となる六月二十七日のやりとり…。  

申請者「食事代すらない。転居先も探せる状況にない。どうしたら」  

職員「自分たちで努力して転居先を見つけないと話がすすまない」  

申請者「努力しているが転居にはお金がいる」  

職員「生活保護が救済する問題ではない。どこに住むかは自分の問題」  

しかし、厚労省の局長通知は、困窮状態にあれば保護し、その後保護費で生活できる住宅に転居できるよう敷金・転居費用を支給することができるとしています。  三回目の申請(七月三日)には弁護士が同行、係長に問題点を指摘。  

係長「転居先を先に確保するよう指導するのは当然の対応」  

弁護士「まず保護し、基準額をだせばよい」  

係長「基準額をだしても高額家賃では生活がなりたたない。保護の趣旨に反する」  

弁護士「話が逆転している」  

係長「大阪市では水際作戦をしていない。北九州市とは違う」  

夫妻は、弁護士の応援によって生活保護の適用となりましたが、「水際作戦」の犠牲となるところでした。

引用終わり。

 

番組では、年金生活者や生活保護受給者がわずかの金を寄付して、生活保護も受けられない市民を助けるネットワークも紹介していた。貧困者同士の相互扶助を実践している人々には頭が下がるが、ここまでやらせなければならないニッポンに厚生福祉行政は存在しない、理念もない。これを実感した夜である。

すでに日本の自殺者は毎年三万人を定常的に維持している。このなかには上記「餓死者」と原因が同一である場合も多いはずである。地方・中央公務員や官僚の<鈍感力>はいま始まったことではない。

 

 

http://www.k5.dion.ne.jp/~hinky/
反貧困ネットワーク

http://www.k5.dion.ne.jp/~hinky/aboutus.html
反貧困ネットワークについて

「貧困問題」に取り組む市民ネットワークが始動
あるようで見えない──だからロゴマークはお化け
http://www.ohmynews.co.jp/news/20070611/11987

視点・論点 「シリーズ格差・貧困」
反貧困ネットワーク事務局長 湯浅 誠
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/4865.html

自殺者統計

http://www.t-pec.co.jp/mental/2002-08-4.htm


nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 2

正義の悪漢

色々なブログがありますが、古井戸さんのブログは、中身が充実していて、読み応えがあります。
福沢諭吉に関するやり取り、大変共感を抱いて読みました。
平山さんは訳の分からない理屈をこねる人ですね。
福沢諭吉の主催する新聞の社説の内容が福沢諭吉の思想と全く関係ないなどと、子供でも考えつかないことだと思うのですが。
古井戸さんと平山さんのやり取りを読んでいて、古井戸さんにとって消耗なことだなあと思いました。私には、平山さんが「本物の古井戸」に思えましたよ。「古井戸」の中に向かって、何を叫んでも闇に吸い込まれるだけですからね。「本物の古井戸」に何を語りかけても、まともな言葉は返ってきません。

古井戸さんが新しい書き込みをする度に、楽しみにして読ませて頂いていますが、一つ、注文。
掲載されている写真の質が低いですね。おおむね、ピンぼけです。
どうしてかなあ。今では、一番安いデジカメでも、接写・手ぶれ防止機能がついているので、もっとまともな写真が撮れるはずですが。
あ、しつれいしました。
遠く、オーストラリアから、拝読しております。
これからも、いろいろと、深い内容の物をお書き続け下さい。
by 正義の悪漢 (2007-10-18 16:34) 

古井戸

>掲載されている写真の質が低いですね。おおむね、ピンぼけです。

あいたた!
 気にしていることをおっしゃっていただきました。 
。。ワタシの古いケータイで撮った写真です。。。
ムスメにデジカメを買ってやったのでおいおい、とり替えていきます。。

最近更新の頻度が減っているのですが。

アダムスミス以降の、経済思想を読んでいます。そのうちレポートしたいと思います。
by 古井戸 (2007-10-18 19:27) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。