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ハンセン病と報道のかたち [Journalism]

2007年5月27日NHK総合でNHKスペシャルが放映された。

 にっぽん 家族の肖像
第一集 母と子 悲しみの淵から

 

番組案内

http://www.nhk.or.jp/special/onair/070527.html

 

#NHK hpから

鹿児島のハンセン病療養所「星塚敬愛園」で暮らす元患者・84歳の日高トシ子さん。強制隔離によって両親と引き裂かれた。そして、妊娠7ヶ月の時、施設で強制的に“娘”を堕胎させられた。一昨年、この“娘”が胎児標本として施設に残されていることが明らかになった。
2年前に、母が“娘”を奪われていた衝撃の事実を初めて知った息子の一夫さん(60歳)。いまだに残るハンセン病への差別・偏見。その中で、大手企業の取締役まで勤めた一男さんは、会社を早期退職し、母の願い=“娘”の供養のために、母に寄り添い、支え始めた。そして、今年ついに母と息子が、“娘”との対面を果たした・・・・。このすべてをカメラは記録した。


女性の元患者・80歳の上野正子さん。上野さんは、夫が断種手術を強制され、子を持つことができなかった。妻に一言の相談もなく、子どもを持つという夢を奪った夫。上野さんは、夫を長く許せなかった。60年続いた夫婦生活。夫が去年亡くなり、上野さんは、慟哭の中で語った。「妻を強制堕胎で苦しめたくなかったから、夫は自ら犠牲になった。私は愛されていた」。
奪われたからこそ、失ったからこそ、わかる、家族が普通に暮らせることの尊さ。
高齢になった女性たちが、今再び家族を持つことは「夢のかけはし」でもある。
女性たちの残された日々を、その夢への思いとともに見つめる。

 

上野さんの夫は、結婚したその日に断種手術をされた(施設で、睾丸を切り取られたのである)。

直後、上野正子さんが洗濯をするとき、血で染まって真っ赤な下着を受け取った。このときの衝撃を今も忘れない。その日以後、子供を持つ歓びを奪われた妻は、自分に黙って手術をした夫を長く怨み通したのである。

 

『父ちゃんの前で泪見せたことはなかったけど、きょうは泣きたいきがする』 仏前で。

。。。上野さんは、慟哭の中で語った。「妻を強制堕胎で苦しめたくなかったから、夫は自ら犠牲になった。私は愛されていた」。。。。上野正子さんは、身体不随になった夫を、その死までながく介護したのである。

 

58年ぶりに堕胎させられたモモコちゃんの棺に対面した日高トシコさん、トシコさんの長男一夫さん。

 妊娠を帯で締めて隠していたが、7ヶ月目に見つかった。腹の中の子どもが日高トシコさんの局部から麻酔もせずに掻き出され、鼻と口を塞がれて殺された。日高さんは子どもが手足をばたつかせてもがくのを目の前で見た(これは人間のすることか?)。こどもの髪の毛はすでに黒々としていた。

日高さんは地元小学校を訪れて子どもたちの前でこの一部始終を話している。

                                

まだ親が不明なまま保存されている胎児は多い。

桃の花が大好きな日高さんは死んだ娘に桃子という名前をつけた。長男一夫を生んだのち、桃子を奪われた後種子島に逃れ10年後、次男隆を生んだ。子どもが差別されるのを恐れ、夫と離婚し、再度、本土に渡って療養所に入った。夫は、子どもに母が必要と、別の女性と再婚した。

 

世界中から非難を受けながら、人を人ともおもわぬ隔離政策・断種政策を政府はとり続けた。それを中止したのは2001年になってからのことでしかない。それまで沈黙し続けたマスゴミは政府の共犯者である。

 

犠牲者達はやがて死に絶える。

犠牲者を生んだもの達は生き残り別の犠牲者を再生産する。

 

(本ページの画像はすべて、放映されたNHKスペシャル)

 

関連記事:

ハンセン病:

http://blog.so-net.ne.jp/furuido/2006-07-09

 患者から見たリハビリテーション医学の理念: 多田富雄の闘い
http://blog.so-net.ne.jp/furuido/2006-10-31

 

 


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コメント 7

ohta

平和への結集第二ブログへのトラックバックありがとうございました。ハンセン病差別は筆舌に尽くしがたいものがあります。NHKは、個別の番組では優れたものを制作・放映しますが、その他のメディアを含め、日々の圧倒的な量の報道が、ダメなのです。だから、市民がメディアをつくるしかない。
例えばそもそも、松岡農相の「自殺」も、現段階では断定してはいけないのですが、各紙はそろって「自殺」の大見出し。政治家の死なのですから、疑ってかかる、というメディアの基本を大事にしてもらいたいところです。
by ohta (2007-05-29 16:31) 

古井戸

松岡氏については、2時過ぎ病院に運ばれて検視後、ただちに警察が自殺、と断定しましたね。
だいぶ前、中川元農林大臣も自殺とされましたが他殺との疑いもいまだにあるようです。

ハンセン病についてはすくなくとも世界で停止を求められており伝染性もない、と確認されているのだから隔離、断種の根拠はないことは明白です。マスゴミは政府の政策に追随しただけ、政府の広報部隊です。
by 古井戸 (2007-05-29 18:22) 

すずめ

非常に誤解されやすく、真意は伝わりにくいと思いますが、「断種」の印象が 日本人には非常に強烈です。
 家畜文化圏では「去勢」は ごく日常的な出来事です。アベラールとエロイーズでのそれが いかなる手技であったかは、それを読む限りでは判断しえませんが、同様な行為であったと分かります。
 で、ハンセン病の子孫への伝播を防ごうとしてなす断種が ある時代の「世界」の影響下にあったとすると、つまり「去勢」に抵抗感の少ない民族が主導するような「科学」の支配下にあったとすると、日本の医師が盲目的にそれに従ってしまったとしても 多少の共感はある。ただ その後、時間が過ぎ、時代が動き、科学が新たな判断を下したとき、過去の習慣や儒教的な上下関係が優先されて、病者の人権が蹂躙されたことには 心からご同情申し上げる。国家的に謝罪と償いをすべきであろう。
 その上で 歴博の故佐原先生は 「去勢をしないのは朝鮮半島の一部と日本だけ」と 言い切っておられたことに注意が必要と思う。明治に日本へやって来たヨーロッパの女性は 去勢していない馬の荒々しさに驚き「あれは何と言う生き物か?」と訊いたそうだ。日本陸軍では軍馬の去勢はしたのだろうか?
 真に「不謹慎」の謗りを免れないかもしれないが、「去勢」「断種」の行為や言葉が内包する「異和感」には いわば日本固有のニュアンスもあると 言いたかった。もちろん それが許しがたい行為であることは疑いようもない。 
by すずめ (2007-05-30 22:30) 

古井戸

日本だけじゃなく、世界のドコでも異常ですよ。

中世のはなしじゃないですよ。牛やブタのハナシでもありません。

佐原の専門は考古学です。騎馬民族の話をしているのではありません。

今論じているのは20世紀の、人間のはなしであることをお忘れ無く。
by 古井戸 (2007-05-30 22:47) 

海外逃亡者

ハンセン病患者に対する隔離政策を行ってきた国は、日本以外にもあるのでしょうか?

そういえば、十数年前、某M十字社の非加熱血液製剤が原因でエイズが大問題になりましたね。そのときもマスコミや政府の対応がかなり槍玉に挙げられていたような気がします。

ハンセン病患者に対する政府の対応や差別・医療処遇に関しては、ただ言葉を失うばかりです。
by 海外逃亡者 (2007-05-31 07:44) 

古井戸

あるかどうか知りませんが、日本が占領していた韓国と台湾でもその影響を受けていますね。いったん、不治、遺伝する、と教育されるとどの国民も同じ対応を取ります。

わたしは自分だったらこんなことはしない、といっているのではありません。戦前に生まれそういう教育を受ければ、兄弟であっても、施設に送り込んで、存在しないモノ、として扱うでしょう。 光田健輔のやりかたでは未来永劫これが継続します。
by 古井戸 (2007-05-31 08:17) 

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