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患者から見たリハビリテーション医学の理念: 多田富雄の闘い [Welfare]

                                            



雑誌現代思想11月号、特集=リハビリテーション、に
多田富雄が、8頁の文章を寄せている。普通の学者なら楽に書けるだろうが多田富雄は身体の自由がきかない。おそらく、不自由な手による長時間のワープロ打ち込み作業からなったとおもわれるこの原稿p34-41をわれわれは熟読すべきである:

「患者から見たリハビリテーション医学の理念」

文章はリハビリテーションの意味を説きあかしているが、原稿から漏れてくるのは、患者と家族を不幸のどん底に突き落とした診療報酬改定(今年の4月から実施)に対する激しい怒りと嘆きの声である。

この診療報酬改定についてここで述べる必要はあるまい。わたしは4月にブログ記事を書いたし、その後の状況はネットで検索すれば読み取ることができる。
http://blog.so-net.ne.jp/furuido/2006-04-08
この記事の元になったのは多田富雄が朝日に寄せた一文である:http://blog.goo.ne.jp/pkcdelta/e/ff0c48b7a8331b4870f77771f3c4767c
その後の状況など↓。
http://my.reset.jp/~comcom/shinryo/tada.htm
http://craseed.net/
多田富雄の闘いはNHKスペシャルで放映された↓
http://www.nhk.or.jp/special/onair/051204.html

p40以降から引用する:

『この改定でリハビリを打ち切られた後、徐々に機能が低下し、寝たきりになってしまう人々がいる。しかし厚労省のアドバイザーになった「専門家」と「(リハビリ)学会」は患者を救おうとしない 』

わたし(古井戸)が最も衝撃を受けたのは次の文章である。尊敬する社会学者鶴見和子さん(鶴見俊輔さんの姉君)が不自由なお身体になられたのも知っていたし、このお二人の往復書簡も読んだ、というのに:

『犠牲者の第一号になったのが、不幸にも社会学者の鶴見和子さんであった。例にあげるのも痛ましくてはばかられるが、11年前に脳溢血で倒れられてからも、リハビリによって、自立して精力的に文筆活動をしていたが、今年になってリハビリ打ち切りが宣告された。回数が減らされた後、間もなく起きあがれなくなり、7月30日に亡くなった。その前に彼女が詠んだ歌に、

政人(まつりごとびと)いざ言(こと)とわん老人(おいびと)われ 生きぬく道のありやなしやと

寝たきりの予兆なるかな ベッドより 起きて上がることのできずなりたり

直接の死因は癌であっても、リハビリ打ち切りが死を早めたのは確かである。小泉さんがこの碩学を殺したと、私は思っている。病床で書いた「老人リハビリテーションの意味」というエッセイには、維持期のリハビリがどんなに生きるために必要かが、切々と語られている。そして今回の改定は、老人に対する死刑宣告だと、いつになく激しい口調で糾弾している。リハビリの「専門家」といわれた人はこの文を読んで欲しい。あなたの専門家意識が打ち砕かれることだろう。

もうこれ以上語るまい。このような老人を救うミッションが、リハビリ医療には厳然としてあるはずである。またそれを忘れた専門家意識が、鶴見さんの死を早めたことを糾弾されるであろう』

(略)

『再び言う。リハビリ科の医師には、苦しんで死に瀕している患者がいればそれを救うという、専門家としてのミッションがある。リハビリ医学会は、それを自ら放棄してしまったのだ。他の医学会や医師会の批判の目に気づかないのであろうか。自分たちの使命を最終的に護るのは、職業団体としての学会の務めである。今回の制度改訂に対して、関連学会、協会は全く態度を鮮明にしていない。むしろ厚労省に加担しているかに見える。これを直視し、謙虚に反省しなければ、学会員の信頼が得られまい。また他の学会からも軽蔑されることだろう。p41

問題が起こったときに、真っ先に声をあげるのは、関連学会の務めである。それを怠ると、必ず内部に亀裂ができる。このような社会問題と化した中での沈黙は、基礎医学の学会運営を長年やってきたものには、とうてい考えられぬことだ。私は患者としてばかりでなく、同じ医学の研究に携わるものとして、今後も追及を止めることはない。』

なにも付け加える言葉はない。
多田さんやおなじ境遇の患者、その患者の家族の嘆きと憤りを共有したいわれわれは、どのようにそれを表現すればいいのか?

多田富雄の闘いに関心をおもちのかたは、このブログ記事さらに、多田富雄の現代思想11月号の上記論文をお読みの上、友人、知人に広めてもらいたい。

多田富雄と、鶴見和子には往復書簡がある:
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4894343401

メディアはどう伝えているか:
http://craseed.net/houdou.html


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キンキン@ダイコク堂

トラックバックありがとうございました。同じ問題について深く憂慮されている方のご意見に接することができ、心強く思います。私も、多田さんの論文を取り上げる記事を書かなければと考えていたところでした。それでも某学会の懇親会で多田さんの論文を紹介するスピーチをしたりして、問題の存在と氏の見解の普及に努めています。
by キンキン@ダイコク堂 (2006-12-28 18:16) 

古井戸

私の父母の問題から、 明日の我が身、の問題になっています。

子供らに苦労はさせたくない。

安楽死方法を 個人に認め、与えるべきです。 冗談じゃなく。 死ぬモノも楽に死にたい、家族もそれを望む。 そういう時代が来るでしょう。 楢山節考、姥棄ての時代。
by 古井戸 (2006-12-29 07:49) 

ゆう星☆

貴重なTBを,ありがとうございました!
by ゆう星☆ (2007-01-13 12:47) 

Santal

トラックバックありがとうございます。
まずは、御礼まで。
by Santal (2007-01-15 21:45) 

mizumakura

トラックバックありがとうございます。

鶴見さんの予後について、初めて知りました。改革という名の弱いものいじめが、ここにもまたあったのですね。
by mizumakura (2007-01-16 00:23) 

日本心臓血管内視鏡学会

はじめまして
by 日本心臓血管内視鏡学会 (2007-02-23 03:58) 

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