辺見庸 [Language]
辺見庸が闘病中だという。
表現過剰なこの作家(元、共同通信記者)をそれほど好きではなかったが、つねに、彼の発言は気になっていた。辺見庸は、アフガン攻撃、イラク戦争開始時にも都度、激烈な反戦メッセージを発した。内容に多少の違和はあろうと、その差分、突出はそのままアンテナ付きモーターとしてわたしを牽引した。プロモーターとして体内に残存する異物、放射物質となった。作家としての<虚>の部分と、生活者としての<実>の部分の不釣り合いが彼の文章を好む人と厭う人に分けたかも知れない。空疎な過剰や不均衡もあれば、時代を先行する故の過剰と不均衡もある。組織に属さず、一個の実存としての人間が発するアジテーションを、浴びるも、拒否するも、それはおなじく一個の人間たる読者の自己責任においてなさねばならない。この作家に訪れた意図せざる状況によっても、表現と現実の間の差分は埋まることはあるまい。その差分は表現者の存在根拠だ。
辺見庸の早い回復を祈る。
2006-04-10 03:46
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コメント(7)
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好きな作家さんは、隆慶一郎さんですが・・・
惜しいことに、完結しないまま、逝ってしまわれました。
あなたのお好きな 作家さん・・・早期回復されるといいですね。
by femto (2006-04-10 13:57)
ドック、行ってますか。行かせてますか?
腹を触る。クビを触る。
うん、まだ、塊はないな。
頭を触る。うん、薄くなったな。
そろそろ、かな?
身辺整理するか。
(荒川洋治全詩集、借りてきた。。いやー。。スゴイね詩人は)
by 古井戸 (2006-04-10 14:02)
いきなり変な言い方ですが、私の経験では、肝心の土壇場で情の希薄な人間は、いわゆる「進歩派」の方に圧倒的に多かったように思います。「民主」「自立」等々の、アタマだけの仏に魂入れをする。その一つが、社会の実体・実情を呑み込んだ「弱者なるものの包摂」だろうと思います。辺見庸については、新聞への寄稿程度しか知りませんが、彼のよさは、試験を通ればジャーナリストの組織的言論人とは違う、本来当たり前の取材感性を持ち合わた人物だからだろうと感じています。
by 朝空 (2006-12-30 16:19)
朝空さん。
わたしは彼の小説は読んでいません(芥川賞)。モノ食う人々、というルポやTVドキュメント化(深作欣二監督)もつまらん(取材費用は会社持ち)とおもいました。朝日新聞夕刊に寄稿した、反戦、反ブッシュの怒りのメッセージを読んで共感しました。共同通信社退社以後ですね。普通のオッサンとしての発言集やインタビュ集は上っ滑りと感ずるところはありますが、感ずるところを100%表現しているらしいことに共感します。本屋で突然闘病中を知り驚きました。 辺見は私と同年です。
by 古井戸 (2006-12-30 19:56)
「モノ食う人々」は、こちらのローカル紙にも連載されましたが、なぜか読む気になりませんでした。あの手のルポは、確か中学生の頃読んだ「ニューギニア高地人」が面白かったように思います。本多勝一にしても、吉本孝明にしても、自然科学系の目というのは、いいように思います。人のすることですので、玉石混こうですが。
どこか切羽詰まったものがないと、気持ちに突き刺さるものは書きにくいのかも知れませんね。飯のための仕事と情念の仕事は別、ということもあるでしょうし。お付き合いの対談などは、辺見の場合、後者の意味では無駄ですね。私は彼より5歳下です。
by 朝空 (2007-01-01 19:12)
追伸
彼は1944年生まれとのことですが、それが正しければです。
by 朝空 (2007-01-02 23:08)
44年でしたか。
私は、48年、段階ど真ん中です。
by 古井戸 (2007-01-03 00:12)